第3章 彼の好きなもの
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白失がWAX COFFEEに衝撃を受けた数日後、今日は珍しくホークスが公安に顔を出していた。
敵側に漏れても問題なく、かつ怪しまれないように職員と会話している。
その会話を聞きながら、白失はホークスの手元を眺める。
やはりWAX COFFEE、白失が少しずつしか飲めなかったレベルの強烈な甘さをホークスはものともしていない。
あっという間に飲み終わり、ホークスが空き缶を捨てようと白失の後ろを通り過ぎるところで思わず呟いていた。
「……そのコーヒーは甘すぎます」
誰にも聞こえないように言ったつもりだったが、ホークスにはしっかり届いていたらしく、彼がこちらを振り向いた。
「白失さん、コレ飲んだことあるんですか?」
「ホークスがいつも飲んでいるので」
白失の返事にホークスは目を丸くした後、微笑んだ。
他人との関わりを極力持たないようにしている彼女が自分に近づいてくれているようで少し嬉しい。
「この甘さがクセになるんですよね〜」
「……」
白失は黙り込んで、じっとホークスを見ている。
ほんのわずかに眉根を寄せ、信じられないと言わんばかりの渋い顔。
白失の変化を目の当たりにしたホークスはますます笑みを深めた。
大抵の人にはきっとこの表情の変化は分からない。
でも確実に彼女が心を開き始めている兆しだ。
いつか笑った顔も見てみたい。
―了―