第2章 彼女の好きなこと
だが、それは間違っている。
5歳で両親の窃盗に加担したことは別に罪でもなんでもない。
それは彼女に個性を使わせ、利用した両親に全責任がある。
もし周囲が彼女の無実を理解できていれば目良が目撃したようないじめはなかった可能性があり、そうなっていれば彼女が周囲に個性を使う必要はなかったかもしれないのだ。
だから彼女が罪の意識を感じる必要はない。
「それにそのことを立証できる人はいません。なんたって忘れているんですから。補強法則って知ってます?自白以外の証拠がなければ有罪にならないってやつです。だから白失さんの自白だけじゃ何の罪にも問われません!」
明るく断言するホークスに白失は呆気に取られた。
補強法則は勿論知っている。
確かに自白だけでは有罪にならないが、施設や学校の関係者から事情を聞けば、白失が個性を使ったことは明白だ。
白失を覚えていないことそのものが個性を使ったことの証左になる。
だからその理屈は通用しないはずなのだ。
ぎゅっと膝を抱えて白失は反論を呟く。
「……屁理屈です」
「屁理屈上等です〜」
ここにエンデヴァーさんやベストジーニストさんがいたら、ヒーローとしてあるまじき言動だと叱られそうだなと思いつつ、ホークスは白失の隣に座った。