第2章 彼女の好きなこと
「趣味と呼べるようなものは何も……」
ある程度予想していた答えに特に落胆することもなく、ホークスは続けて尋ねる。
「じゃあ好きなこととか」
今度はすぐに思い当たり、白失はおもむろに立ち上がった。
「それなら……少し場所を移します。ついてきてください」
今は昼休憩だから席を外しても特に問題ない。
休憩時間内に戻れると見込んで足早に公安本部ビルを出る。
まさかビルを離れるとは思っていなかったホークスは内心慌て始めた。
白失の向かう先がホークスの予想通りなら公安の誰かに見られるのはあまりよろしくない気がする。
そしてホークスの予想は的中した。
公安本部ビルから連絡通路で直結する建物。
公安職員用の寮だ。訓練を受けていた頃はホークスもここに寝泊まりしていた。
白失は迷わずその中の一室に入っていく。
「ちょ、ちょっと、白失さん!?」
二の足を踏んだホークスを白失が促す。
「ホークスもどうぞ。来客用のスリッパはありませんが……」
「それはお構いなくなんですけど」
いくら公安職員寮といってもヒーローという立場で個人宅に入るのは気が引ける。
というか一人暮らしの部屋に男を上げるという意味を彼女はあまりよく分かっていないような気がする。
今は昼間だけど。
ホークスの葛藤など露とも知らない白失は、テレビを点けて布団を被る。
「こうやってテレビを見るのが好きです」
ちょうどヒーローニュースが放送されており、どこそこのヒーローが活躍したというテロップが次々と映し出されていた。