第1章 光を厭い 光に憧る
「手がかりがその番号しかないのなら、どのみちそこを追うことになると思います」
「お前、やけにやる気じゃん。いつも無口無表情な奴が珍しい」
「やる気の有無以前にこれはやらなければならないことです」
「はいはい、じゃ、この後頼んだわ」
「職務放棄ですか?」
「違ぇよ、人聞きの悪い!お前の方こそちゃんと尋問の記憶消したんだろうな?」
「はい、いつも通りに。捕まった者達は尋問されたことすら覚えていません」
触れた相手の記憶を触れた時間分だけ消す。
それが私の個性であり、尋問後に被尋問者の記憶を消すのが公安での主な役割だ。
たとえ捕まえた敵が外にいる仲間と通信できる個性を持っていたり、外の仲間が捕まった者の記憶を見ることができる個性だったとしても尋問内容が漏れることはない。
助手席の同僚は何度もあくびを噛み殺しており、かなり眠そうだ。
「とにかくこっちは昨夜から出詰めなんだよ、ちょっと寝かせろ」
それは知っている。
だから今日は自分が運転手なのだ。
居眠り運転など言語道断……と考えていると、隣の同僚はもう寝入っていた。
どこでもすぐ眠れて、すぐに起きられるのは公安職員の特技かもしれない。
寝息を立てている同僚を横目に、白失は今回尋問した敵とその仲間について考える。
USJに現れた寄せ集めのゴロツキよりも明らかに戦闘能力が高く、生徒と教師、プロヒーロー達との分断と戦術的に動いていたことから林間合宿には精鋭が集められたと思われる。
が、尋問から得た答えから今回捕まった者達は総じて敵連合の中での地位は低いと推測される。
敵連合にまだこちらの知らない仲間がいる可能性……純粋に戦闘能力が高い者だけでなく、脳無を生み出していると思われる者が少なくともいるはずだ。
……まだ掴めていないことが多すぎる。