第1章 光を厭い 光に憧る
時刻は午前0時を回っていた。
「もうだいぶ遅いんで送りましょうか?」
「いえ、今日は宿直なので結構です。ホークスこそ早く休んでください」
「じゃ、お言葉に甘えて。白失さんもあまり無理せんでくださいね」
踵を返したホークスが部屋を出ようとしたところで白失に呼び止められる。
「ホークス、忘れ物です」
キーボードの上にあった羽根を取り、ホークスの方へ差し出した。
「ああ、別に気にしないでください。すぐ生えてくるんで」
ホークスがそう答えると白失は羽根に目を落とした。
摘んだ羽根をクルクルと弄り、何やら考えている。
「……この羽根、いただいてもいいですか?」
「どうぞ」
「……もし、私がまた悪いことをしそうになったら止めてくれますか?」
消え入りそうな声で呟かれた言葉には、自分のことを信用できないという心情が浮かび上がっていた。
剛翼に、ひいてはホークスに抑止力になってほしいと言っているようなものだ。
「うーん、そうしたいのは山々なんですけど、ぶっちゃけ距離によります」
しかし、ホークスは白失の期待する答えを返さなかった。
「だから、もう悪いことしないでくださいね」
剛翼を操れる距離に制限があるのは本当だが、そんなことをしなくても白失がいたずらに悪事を働くことは絶対にないとホークスは信じている。
「……自信ないです……」
「自分のこと、信じられませんか?」
こくりと頷いた白失。
「じゃあ、俺が白失さんの分まであなたのことを信じます」
「ぇ……?」
予想だにしない言葉に白失は驚きしかなかった。
「ヒーローの信頼ならちょっとは信用できそうな気がしません?」
「でも……」
「大丈夫ですって!俺は全く心配してませんよ。だってあなたはヒーローを救おうとしてくれた人なんですから」
ね、と笑う彼はどんな光よりも眩しかった。
―了―