第1章 光を厭い 光に憧る
無表情に戻った白失、その顔はほんの少しだけ柔らかい。
彼女がメールを削除するのを見て、ホークスはホッと息を吐いた。
これでもう大丈夫。
……と思った矢先、白失はパソコンの上に手を置いていた。
「何してるんです?」
「メールの作成ログを消しています。私の個性は機械にも有効ですから」
ホークスは小さく息を呑む。
それは使いようによっては痕跡を残さずにハッキング等が行えるということだ。
今回の場合、万が一後日調査されても決定的なものは見つからなくなる。
改めて「放っておいたら危険だ」と言っていた目良の言葉を思い出し、肝が冷える。
彼女が公安側でよかった。
「……ホークスは潜入捜査が嫌ではないのですか?」
個性を使っている合間に白失がぽつりと呟いた。
「好きか嫌いかで言ったら、そりゃあ好きではないですよ。でも俺の目指す世の中にするためには必要なことだとも思ってます」
「目指す世の中?」
「俺はヒーローが暇を持て余す世の中にしたいんです。そういう世の中をより早く実現できると思ったからここにいます」
「それは合意の上ということでしょうか?ヒーロー免許の剥奪や資格停止を盾に脅されたとかは……」
「ないですよ〜。心配性ですね、白失さんは」
……まぁ、会長からこの話を出された時に少しでも渋ったらそうなっていたかもしれないが、自分は二つ返事しているから彼女が心配しているようなことは何もない。
そうこうしている内にログ消去まで行った白失から「確認お願いします」とパソコン画面を見せられ、別に疑っていた訳ではないが、何もかも完全に消えていることに驚いた。