第1章 光を厭い 光に憧る
しかし、胸の奥から押し寄せる昏い波をホークスの明瞭な声が遮った。
「神野事件以降、いち早く敵連合の連絡先の裏を取り、逃亡した敵達の情報を正確に教えてくれた。そして公安の職務を理解した上で俺をこの潜入捜査から外そうと奔走してくれた。これが俺の知っているあなたです」
とても敵のやることじゃないですよね?と肩をすくめたホークスは更に続ける。
「それにあなたが本気で敵になるつもりだったなら、ここに自分がいたって記憶を俺から消してるでしょ?その隙はたくさんあったのにしなかった」
「……できなかっただけでは?あなたは今やNo.2ヒーロー、私の手を避けるなんて容易いはずです」
「キーを押そうとしたあなたの手を阻んだ剛翼も俺の一部ですし、今はあなたに触れている。簡単でしょ?」
確かにホークスの言う通りだった。
でも私にはそんなことできない、
ヒーローの行いを無碍にするようなことなどできる訳がない。
「この手はヒーローを助けるために差し伸べられた手です」
返す言葉を見つけられずにいると、重なっていた手を優しく握り込まれた。
「俺のために怒ってくれてありがとうございます」
「……お礼を言われる資格なんてありません」
むしろ私は責められてもおかしくないことをしている。
「……あなたが敵連合に連絡するのに使った電話番号は、私達が尋問して確証を得たものです。私達が聞き出さなければあなたは潜入なんて命じられなかったかもしれないのに」
「だったら尚更ですよ。あなた方がこの番号を突き止めてくれたから、より早く、確実に敵連合を丸裸にできる」
ホークスの黄金色の瞳から目を離せなくなる。
ああ、あなたは、
どんな場所に立たされようとも、絶対に輝きを失わない
正真正銘のヒーローなんですね