第6章 ・闇魂
ベリアルはまず、ゾロの戦闘方法や戦闘力、魔力がどれ程のものか見たいと思い、彼に死皇帝に変異する様に指示を出した。
「わしが来る前にも死皇帝になったそうじゃからな。魔力も相当使うんじゃろうから、無理にとは言わん」
「いいや、変異するだけなら、全然疲れねえから大丈夫だ。ただ、凶暴化するかも知れねえからよ……」
「なあに、その時はその時じゃよ。わしは、お前さんの真の姿……今のお前さんの力が見たいのじゃ」
「おれの本当の姿……か。判った……見て驚くなよ?」
納得したゾロはそう言って、すぐに死皇帝に変異した。
変異時の苦痛も爆風もないに等しい、それはそれは、静かな変異であった。
死皇帝となったゾロの体からは、やはり黒紫色のオーラが漂い、その瞳は鈍い銀色の光を放っている。
その姿に、紅い龍の魔神は驚嘆の声を上げた。
「おお……!!!これは……まさしく死皇帝……!!!姿こそ違えど、黒紫色のオーラ……結晶化した左腕に右半身……かの死皇帝と同じじゃ……しかも凄まじい魔力を秘めておる……何とも神々しい……!!!」
「……ベリアル……おれのこの姿……気に入ってくれたか……?」
ベリアルの独り言に、ゾロが反応する。
紅い龍はその目に涙を浮かべ、喜びつつ、ゾロに近付き訊ねる。
「おお……おお、本当に素晴らしい姿じゃぞ……しかしてゾロよ、わしが判るのかな?」
「……勿論だ……魔王ベリアル卿……」
ゾロはニヤリと不敵な笑みを浮かべつつ、そう答えた。
彼の様子を見たベリアルは、納得して一度頷き、目に浮かんだ涙を拭いつつ、講義内容を伝えた。
「うむ、うむ……確かに、わしをしっかり認識している様じゃな。では、その状態で魔法属性を武器に付与する術……『エンチャント』を教授するぞい」
「……エンチャント……武器に魔法属性を付与、か……そりゃあ、楽しそうな攻撃方法だな……」
ゾロの右目が、一瞬不気味に光る。
死皇帝となった彼はやはり、通常時よりも好戦的な様である。
ベリアルは、そんなゾロに心躍らせた。
「ほほう、やる気に満ち溢れているのう……関心じゃ。まあ、マハジオンガを思い出して使った様じゃから、エンチャントも思い出すかも知れんが……先に教えておいた方が良かろう。死皇帝ゾロよ、宜しいかな?」
「……おれは何時でもいいぜ……」