第6章 ・闇魂
「ああ、今の状態でも、読める事は読める。でもまあ、まだちょっと不安定だけどな……って言うかよお……お前、何ビビってんだよ。おめーには何にもしねえから、そんな顔すんなよ」
そう言って笑うゾロに、オセは何も言う事が出来なかった。
何時からそんな能力が開花したのであろう。
だが彼は、ある事に気が付いた。
(まさか……読心術が……ジオの上位魔法であるマハジオンガも自然と身に付いていた……と、言う事は……)
オセは、今一つ確信が持てなかったが、これからの講義は、死皇帝に変異する拒否反応を軽減する為の訓練である。
その為には、ゾロの体内に残っている人間の細胞を闇の力に慣れさせる為、繰り返し変異する必要があった。
しかし、その変異を繰り返せば、ゾロはどうなるのか。
更なる能力を開花させるのか、それとも、彼自身は元より、大魔王でも抑え切れない力を身に付けるのか。
オセは、嘗て死皇帝が持っていた、強大な力を思い出す。
(……嘗ての死皇帝も、読心術の能力を持っていた……恐らく、変異した事でそれが覚醒したのだろう……更なる力の覚醒か……危険だが、やるしかないか……)
オセが心の中で呟いた時、ゾロが笑顔を見せつつ彼に言った。
「心配すんな、おれの身にどんな事があっても、お前等には危害は加えねえ……そう約束したろ?」
「ゾロ……お前……」
「悪りい、ちょっとお前の心ん中
、覗いちまった……」
読心術は、他人の心に土足で入る様な術である。
流石のゾロも、読心術を使う事には躊躇いがあるのだろう。
しかも、相手は敵でなく味方である。
だが、ゾロにはオセの不安な気持ち……思念が、しっかり届いていたのだ。
不安と言う感情、思念は、負の力……闇の力に直結する。
負の思念が強ければ強い程、ゾロに伝わって行く。
闇を司る力を持つゾロは、オセの中にある闇を、無意識に読んだのだ。
オセは、苦笑する他なかった。
「全く、お前には敵わんよ……よし、では……死皇帝に変異してみろ」
「おう、じゃあ……やるぞ」
こうしてゾロは、再び死皇帝の姿へと変異した。
彼は、バーチャルルームで気の済むまで戦い、元の姿に戻り、また死皇帝に変異……と言う事を続けた。
これを繰り返す事、五回。