第6章 ・闇魂
「おーい、オセ!!!……いねえのかよ……何処行きやがったんだ、あいつ等」
瞑想から覚めたゾロの大きな声が、オセとシトリーの耳に届く。
「おれはここだ!!今そっちに行く!!!」
オセは大きな声でそう言うと、シトリーに目配せして、ゾロの元に駆けて行った。
彼等が姿を現すなり、ゾロは半ば呆れつつ、ブツブツと文句を言い始めた。
「……全く、どんな邪魔すんのかと思ったら……おれの精神に直接入って来てんだぞ。お前の考えてる事が筒抜けなんだよ……入って来るなら、なんも考えないで入って来いよ」
ゾロの苦言に、シトリーは体を小さく丸めつつ、申し訳なさそうに呟いた。
「……いや、面目ない。今迄は精神世界で攻撃される事はなかったからな……あ、ニンゲンばっかりだったから……当たり前か……」
彼の呟きを聞いたゾロは、呆れて言葉も出なかった。
オセは独り、少し考えてからゾロに気になる事を訊ねた。
「うむ……やはり、お前の精神は尋常ではない様だな……いや、すまん。しかしお前、シトリーに何をしたのだ?コイツはしきりに怖がっていたんだが……」
「いや……おれは特に何もしてねえが……おれのオーラにシトリーが侵入して来た時に、自然と衝撃波が発生したみたいだな」
「し、自然と……だと?」
オセは目を丸くした。
魂自体が、肉体や精神世界に侵入して来た者に攻撃を仕掛ける等、聞いた事がなかったからである。
それが出来るのは、肉体を持たない魂や、所謂幽霊と言われる幽体のみ。
魔神の肉体は人間のそれとは違い、霊体を顕現させる為の特殊な細胞組織を持ち、常に魂とリンクしている状態で、魂が直接攻撃する事はない。
だがゾロの場合は、彼の意識に関係なく、魂自体が常に防御網を張っていると言う、特殊な状態であった。
彼の精神世界で起きた出来事とは言え、前例のない事案に、オセはまた無言になってしまう。
(ゾロの意思の強さの根源は……やはり魂……これが『合一魂』の強さなのか……)
オセはそう考えつつ、ゾロの話を聞き続ける。
「……おれも良く判らねえんだけどよ……バリアみたいなもんだな。侵入者がいたら、自動的に攻撃するって感じの……あー……それから……」
「それから……何だ」
怪訝な表情でゾロを見詰めるオセに、ゾロは平然とした体で話を続けた。