第6章 ・闇魂
「……お前も知ってるだろ、負の思念……シトリーが持ってる闇の思念の吸収をするつもりだったんだ。そいつの存在自体を消すなんて事は、流石にしねえよ」
ゾロの話を聞いたシトリーは、安心したのか、どっと疲れが出て、その場に突っ伏してしまった。
そして目の前で胡座を掻いているゾロの顔を見上げながら、大きな溜息を一つ吐く。
「……闇の思念……力の吸収、か……全く大した奴だ。七十二柱の一柱であるこのおれが、恐怖を感じた位だからな。お前の精神……魂は、本当に真っ暗闇で、真っ黒で、寒くもあり熱くもあり……何も見えなかった……それが一番、恐ろしかった……」
「へえ……おれの魂は、真っ暗闇で真っ黒なのか……魂にも色とか温度ってあるんだな、面白れえな」
肩を落として話すシトリーとは対照的に、ゾロは笑いながらそう言った。
そんな彼を見たシトリーは、半ば呆れて脱力したまま、そこで眠りに就いてしまった。
(ゾロの魂には、元から強力な結界が張られているのか……うむ、やはり……閣下の仰る通り、嘗ての死皇帝よりも遥かに強力になっている……強い意志を持った魂……か……)
ゾロとシトリーの会話を黙して聞いていたオセは、独り納得して頷き、一呼吸置いてからゾロに声を掛けた。
「よし、集中力、忍耐力は、おれが思っていたよりも強靭な様なので……次の修業に入るぞ。それを以って、おれの講義は終了だ」
「なんだ、次で終わりなのかよ……早いな」
「うむ、それだけお前が講義に集中していたと言う事だ。さて……それでは、魔力と覇気の強化の訓練をするぞ。お前がサキュバスを水中から引き上げた時に使った念動力……あの時は、かなりの集中力と精神力を使って、少々疲れていた様だったが……」
「ああ……流石にな。まさかサキュバスに出くわすとは思ってもみなかったしな……まあ、いい経験にはなったけどよ」
そう言って笑うゾロに、オセは頷きつつ、話を続ける。
「……その念動力を含め、魔法をもっと楽に簡単に使える様に鍛錬するのだ。魔力、覇気を強化すれば、そのニンゲンの姿……デミゴットの時でも、ある程度は魔法も使える様になるから、更に強くなるぞ」
「ある程度……か。やっぱり変異した方が、強え魔法を使えるって事か」