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魔王之死刀

第6章 ・闇魂


 それは怒りと憎悪の塊となった、ゾロの思念であった。
 またしても遠くにふっ飛ばされたシトリーは、恐れ慄きつつ、慌ててゾロの精神世界から出て行った。
 一方のゾロの魂はと言えば、全く動じる事も表情を変える事もなく、相変わらず真正面を見詰めたまま、そこに座り続けているだけだった。
 ダアトへと戻ったシトリーは、自分の体に戻ると息を切らせつつ、剣の手入れをしているオセの所迄、慌てて走って行った。

「お、オセ……すまん……水をくれ、水を……!!」

「そんなに慌てて……どうしたシトリー。ゾロの精神で何かあったのか?」

「き、貴様……!!おれをあんな恐ろしい奴の世界に放り込んでおいて、何をそんな呑気に剣の手入れなんかしてるんだ!!あの男は、おれを吸収しようとしたんだぞ!!!」

「吸収?ゾロの精神世界で?一体お前、どんな攻撃を仕掛けたのだ……まあ、ちょっと落ち着け」

 オセはそう言い、シトリーの目の前に、水の入ったペットボトルを一つ差し出した。
 シトリーはそれを受け取ると、前足でペットボトルを挟み、口で器用にキャップを開けて、水を勢い良く飲み始める。
 大量の水を慌てて一気に飲んだからか、シトリーは激しく咳き込んだ。
 オセは半ば呆れつつ、シトリーの背中を何度か軽く叩いてやった。

「大丈夫か?そんなに慌てて飲むから咽るんだぞ」

「はあっ……はあっ……ゴホッ!!こ、これが慌てずにいられるか……!!オセ、あいつは本当マジメに恐ろしい……!!!飛んでもなく恐ろしい奴だぞっ!!!」

「……そんな事は、おれもとっくに判ってる。あいつが真の姿になった時の残虐性をこの目で見た時……流石に恐ろし過ぎてな、卒倒するかと思った位だ……お前、奴の精神世界で、一体何を見たのだ?」

 オセは、訝しげな表情をシトリーに向けると、訊かれた彼は体を震わせつつ、呟く様に答えた。

「……奴の……魂の根源を見た……怒りに満ちた影……真っ黒い蛇の様な、龍の様な影……あれは……まさしく……」

「……ふむ、なるほど。やはりお前は、奴そのものを見た様だな。それが現れたと言う事は、お前、相当な怒りを買ってしまった様だな……」

「呑気にそんな事言うなっ!!」

 シトリーが怒りだしたその時、少し離れた場所からオセを呼ぶ声が聞こえて来た。
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