第5章 ・魔王顕現
にも関わらず、ゾロは強度が増したレギオンを、いとも簡単にバラバラにしてしまったのである。
しかも、二体同時に。
断末魔と共に、敵の血が飛び散って行く。
その血がゾロの体に降り掛かると、彼は目を剥き、邪悪な笑みを見せた。
「足りねえなぁ……もっと見てぇなぁ……お前等の薄汚え血をよぉ……」
ゾロは、先に吹っ飛ばした三体のレギオンに視線を移す。
一部始終を見ていたレギオンは、恐れ慄き、逃げ道を探しつつ走り回っている。
「逃げ場なんてねえぜ……大人しく、おれにぶった斬られろ……!!!」
ゾロは、刀を構えつつ飛ぶ様に走り始めると、そのまま三体のレギオンに突っ込んで行った。
「三刀流奥義……六道の辻……!!!」
ゾロが技を繰り出しつつ三体のレギオンの中を通り抜た瞬間、それらの体はバラバラに四散して行った。
刀傷一つないゾロの背中に、レギオンのドス黒い血が大量に降り掛かる。
その血は当然本物の血ではない。
しかし、その感覚は本物の様に、実に生々しいものであった。
背中に降り掛かった返り血のドロリとした感触が、彼を更なる狂気へと駆り立てる。
ゾロは、更に目を大きく見開くと、狂った様に笑い始めた。
「ア……アハハハハ……ハハハハハハ!!!いい……いいぜ……最高だ……!!!もっと見せろ……おれに、てめえ等の薄汚ねえ血をもっと見せろ……!!!」
恍惚の表情を浮かべつつ、ゾロはバラバラになった敵に視線を落とす。
ゾロは、鉄屑と化した敵を、更に刀で斬り付けて行った。
何度も、何度も。
彼は鉄屑のみならず、更にその地面、いや、床を斬り続けた。
敵の姿も見えず、叫び声も聞こえないバーチャルの世界。
魔王と化した男は、銀色の瞳をギラ付かせながら、大声で叫んだ。
「おい!!!もう終わりかよ!!!足りねえんだよ……血が足りねぇんだよ!!!もっと寄越せ……おれにもっと血を見せやがれ!!!」
バーチャルルームに、怒号が響き渡る。
狂った様に辺りの床を斬り刻み続ける彼の体からは、相変わらず黒紫色のオーラが不気味な程に立ち昇っている。
その銀色の瞳は何処を、何を見ているのであろう。
姿は人間。
しかし、その心……魂は、血に飢えた魔王。
そんな彼の姿に、流石のオセも体の震えを止める事が出来なかった。