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魔王之死刀

第5章 ・魔王顕現


 すると、コンピューターの一つが起動し、中央にある円筒状のオブジェが光ると、その壁面に入口が現れた。
 
「これは『バーチャル・トレーニングルーム』と呼ばれる、ニンゲンの学者達が作ったものだ。ここに入ると、人工知能を搭載したロボットが敵として、沢山出て来るんだ。敵はロボットだけと非常に頑丈に作られていて、ちゃんとダメージを食らうと痛みも感じるし、血を流す等、非常に精巧に作られている。どうだい?やってみるかい?」

「へえ……そりゃ、楽しそうだなぁ……早く……殺りてぇなぁ……」

 ゾロは目を剥き舌舐めずりをすると、ニヤリと笑った。
 彼は右腰に差している三振りの刀のうちの一振りに、右手を掛ける。
 それは、閻魔だった。
 彼の殺意に反応する様に、閻魔が鞘を通して、黒紫色に不気味に光り出した。
 それを目にしたルシファーは、二度三度頷き、彼に言う。

「では早速、この装置に入ってくれ」

 ゾロは鋭い眼差しを入口に向けると、バーチャルルームの中に、ゆっくりと入って行った。
 入口の扉が閉まり、モニターに中の様子が映し出される。
 高解像度のモニターが、ゾロの姿を鮮明に映し出すと、ルシファーとオセは彼の様子を伺った。

「よし、ゾロ。始めるよ」

 無言で頷くゾロの姿を確認すると、ルシファーはパソコンのキーを一つ、薬指で軽く叩いた。
 バーチャルルームの内部は、かなりの広さがあり、一面に砂漠と瓦礫と化した街が広がっていた。
 勿論そこはバーチャル……仮想現実の世界である。
 しかし、現実世界と錯覚してしまう程、非常に精巧に造られていた。
 ルシファーがキーを叩いてから数秒。
 目の前に広がる瓦礫だらけの世界をじっと見ていたゾロは、何かの気配を察知すると、閻魔を右手で、三代鬼徹を左手で素早く抜刀する。
 刹那。
 ゾロの目の前に、見覚えのある異形の生物が五体同時に現れた。
 それは、彼が先日倒したレギオンであった。
 途端にゾロは、凍り付く様な笑みを見せた。
 完全に魔神と化した彼の脳裏には、レギオンの一部となったくいなの面影等、最早、思い浮かぶ事もないのであろう。
 半人半魔から、完全なる魔の者への変異。
 それは彼の中にある、強烈な闘争心や凶暴性、残虐性が、完全に解放された姿であった。
 人間の姿をした、血に飢えた恐るべき魔の王。
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