第5章 ・魔王顕現
『死』と言う言葉が、彼の気持ちを異常に高揚させて行った。
そんな彼の様子に、ルシファーもまた、不敵な笑みを浮かべる。
「それは良かった。では、もう一つ……ゾロ、暴れたいかい?」
「ああ……ぶった斬りてぇ……血が見てぇんだ……大量の……血の雨が降る位のな……」
鋭い眼差しを大魔王に向けつつ、独り言を呟く様に、ゾロはそう言った。
「それじゃあ、思いっ切り暴れられて、斬り捲れる場所を案内するよ。オセ、悪いけど、ゾロの着替え等を持って、僕に付いて来てくれるかい?」
ルシファーの言葉に、ゾロは目を見開き、口端を上げた。
それ程迄に、誰かを斬り刻み、血が見たいのであろう。
ゾロの姿と言動に少々たじろいでいたオセだったが、ルシファーに声を掛けられると、我に返り、すぐに返答する。
「お、おお、なるほど……あの場所に行かれるのですな……承知致しました」
オセは頷き、移動する。
彼は、少し離れた岩陰に干してあった着替えと本を手にすると、すぐにルシファーの元に戻って行った。
「……では、行こうか」
ルシファーの言葉に反応する様に、彼等の足元に青白い魔法陣が浮かび上がると、その姿は一瞬で消え去った。
彼等が移動した場所は、何処かの建物の内部の一室であった。
その部屋には窓はなく、中心には筒状のオブジェの様な物が置かれている。
そのオブジェを囲む様に、最先端のコンピューターやモニター等が、何台か配置されていた。
それは既に起動しており、何時でも使用出来る状態である。
ルシファーは、一呼吸置いてから、ゾロに説明を始めた。
「ここはね、元々はニンゲンが作った『トウキョウ議事堂』と言う所なんだ。三年前迄『ベテル』と呼ばれていた、あの四文字の奴の施設になっていた建物でね。戦いの後、この建造物を調べたら、面白いものが出て来たんだ」
「……面白い……もの……?」
ゾロは呟く様に訊ねると、大魔王は大きく頷き、話を続けた。
「この筒状の装置は『転輪鼓』と呼ばれる、瞬間移動装置……又は『ターミナル』と呼ばれているもので、君がいた世界を始め、様々な場所に繋がっているんだ。その中に、こんなものが設置されていてね……まあ、見ててよ」
ルシファーは、目の前に置かれているパソコンのキーボードに手を伸ばすと、器用にキーを叩き始めた。