第5章 ・魔王顕現
「……ふむ、流石はゾロだ。やはり魔力は非常に強大……しかもまだ、力を温存してる状態だ。これが闇に包まれた彼の真の姿か……本当に素晴らしい……」
ルシファーはそう言いながら、ゾロのいる場所へと歩を進めた。
彼の足取りは軽く、その表情は非常に明るかった。
「か、閣下、そんなに近付いては……!!」
「大丈夫だよ、オセはそこで待機していて」
慌てるオセを余所に、少年の姿をした大魔王は、ゾロの目の前で立ち止まると、微笑みながら彼に声を掛ける。
「やあ、ゾロ……僕が、判るよね?」
「……勿論だ……我が友……ルシファー……」
ゾロは目を見開き、ニヤリと笑った。
声帯にも影響があるのか、ドスの効いた低い声が、何時もより更に低く聞こえる。
大魔王は、彼の鈍い光を放つ銀色の瞳を見詰めると、笑みを浮かべたまま頷いた。
「うん、いい感じだね。では、あそこにいる者が誰か、判るかな?」
ルシファーはそう言って、振り返りオセを見た。
ゾロは、その視線をルシファーと同じく、オセに移す。
「……ありゃあ、オセだ……おれ達の、仲魔……そうだろ……?」
ゾロは、そう言って口端を上げた。
どうやら、敵味方の判別は付いている様である。
大魔王は大きく頷くと、彼にまた質問をする。
「気分は……どうだい?余り、良くないかな?」
「……いいや、そうでもねえなぁ……誰かをぶった斬りてえ気分だ……血が見てぇ位、いい気分なんだ……最高の気分だぜ……」
ゾロは低い声で、呟く様にそう答えた。
「血が見たい位、最高の気分……か。なるほど、流石は闇と死を司る魔王だ……頼もしい限りだ」
ルシファーのその言葉に、ゾロは、凍り付く様な笑みを見せた。
ゾロは、この異常とも言える興奮状態を楽しんでいるかの様に、そう答えたのだ。
彼の表情を見た大魔王は満足そうに頷き、更に訊いた。
「さて、君のその姿……何と呼べは良いかな?」
「……そんな事は、どうでもいい……好きに呼んでくれ……」
「うん、それでは……『死皇帝』なんて呼び名はどうかな?死の皇帝……君の『魂の片割れ』が皆に付けられ呼ばれた、二つ名なんだが」
「……おれの、魂の片割れ……?へえ……そうなのか……死の皇帝、か……そりゃあ、いい呼び名だ……気に入ったぜ……」
ゾロの瞳孔が、更に開く。