第5章 ・魔王顕現
「まだ正式に任命されていないとは言え、お前は魔王になる者だぞ……お前の力は、まだまだそんなもんじゃないって事だ」
「じ、冗談だろおい……」
「冗談ではない……お前はまだ自分で気付いていないかも知れんが、お前のその体に秘めている覇気は凄まじいものだ。それを全て魔力に変換するのだぞ……そしてその覇気と魔力を更に鍛えれば……例えば、このおれを始め七十二柱等、お前の敵ではなくなる程……おれの言ってる事が、判るな?」
ゾロは、思わず目を丸くする。
自分自身の中にあると言うその力を、彼は未だに感じられないのだ。
しかし、オセが真顔でそう言うのだ。
この状況で冗談等言う筈もない。
ゾロは、覚悟を決めた。
「オセ……もし、おれが凶暴化して止められねえ時は、すぐにルシファーを呼んで、おれを力ずくで止めて貰ってくれ。お前がそこ迄言うんだ、おれを止められるのは……奴しかいねえ」
「……勿論、そうするつもりではいるが……そうなると、お前は元より、閣下も無事ではないかも知れん……だからこそおれは、閣下にこの話を持ち掛けられた時、一旦お断り申し上げたのだが……」
「それが何だってんだ、おれ達は死なねえんだろ?何心配してんだよ」
オセの不安を払拭する様に、ゾロはきっぱりと言い放つと、ニヤリと笑って見せた。
ゾロの覚悟と度胸の良さに、オセは感服し、そこで彼は、やっと腹を決めた。
「……うむ……判った。流石は閣下が見込んだ漢だ。では、お前が持つ全ての覇気を、魔力に変換する術を教えよう」
こうしてゾロは、自分が持っている覇気を魔力に変換する術を、オセから学ぶ事になった。
しかしオセは正直、内心落ち着かなかった。
ゾロの中に眠っている覇気が強ければ強い程、強力な魔力に変換されるのだ。
それが今後強化されれば尚更、である。
もし万一、ゾロが凶暴化した場合、どれ程の強さ、そして恐ろしさになるのか。
「……お前が持っている覇気の多くは、その体内に潜在しているものが殆どの様だ。まずはそれを全て解放させよう。但し、先程も言った様に、一気に解放する為、慣れないうちは多少の苦痛が伴うかも知れん……覚悟は良いか?」
「ああ、とっくの昔に腹は括ってらあ……とっととやるぞ」
「……では、先程教えた手順で、ゆっくりやってみろ……」