第5章 ・魔王顕現
あの戦いの後、戦いを見ていた仲魔達から自身にどんな変化があったのかを、彼は訊き知ったのである。
「うむ。閣下が『羅刹』と命名された状態だが……あの変異は、今のお前の半身半魔……デミゴットの状態を、更に強化した様な変異なのだ。これからやろうとしている事は『完全なる魔の者への変異』だ。どんな風に変容するか……全く前列がないから判らんのだ……」
「……早い話が、手の付けられねえバケモノになる可能性がある……って事か?」
「その通りだ。お前の体内にある細胞の殆どは魔のそれであるが、まだ残っているニンゲンの細胞に魔力がぶつかるのだ。激しい拒否反応を起こす可能性は十分あり得る……故に、外見が醜くなってしまうかも知れん。安全に覇気と魔力のバランスを取りつつ、徐々に魔力に変換させる方法はない訳ではないが、それをやるには、余りにも時間が足りな過ぎる。あくまでも、この方法は最終手段なのだが……」
「なんだ、そんな事かよ……そんなん気にしねえよ、おれは。まあ、あいつ等はビックリし過ぎて逃げちまうだろうけどな。どんな姿になるのか知らねえが……例えばタコみてえな姿で永遠に暮らすってのも、なかなか面白そうじゃねえか」
ゾロはそう言って、軽く笑い飛ばした。
彼の脳裏に、仲間達の驚く顔が目に浮かぶ。
だが、自分がどんな姿になろうが、そんな事は、彼にはどうでも良い事であった。
ただただ最強を目指すのみ。
ゾロの強さへの執念と決意は、ダアトに来てから、更に強固なものになっていた。
オセは、彼の意思の強さに内心感心しつつ、話を続ける。
「いや、まだ何とも言えんが……魔力をまた覇気に戻せば、今のその姿に戻る可能性もあるのだ……これが魔の者とニンゲンの間に生まれたお前が持つメリットであり、デメリットの一つだそうだ……」
「なんだ、一時的なもんなのかも知れねえのか。じゃあ、全然問題ねえだろ」
「……容姿の変容よりも、それ以上にお前が凶暴化した時が問題だ……万一凶暴化した時……おれに、お前が止められるかどうか」
「何言ってんだ。魔法での攻撃は、お前の方がずっと強ええんだろうが。何を心配してんだよ」
訝しく思ったゾロは、眉間に皺を寄せつつ、オセにそう言った。
真顔だったオセの表情が、更に険しくなる。
彼はゾロに、静かな口調で諭す。