第4章 ・対峙
だが、そうではないのがロロノア・ゾロと言う男である。
驚いた事に、彼の下半身は少しも反応していない。
彼は興奮するどころか、全く涼しい顔をしている。
そんな彼だが、性的不能者でもなければ同性愛者でもなく、別に厳しい禁欲生活をしている訳でもない。
彼も男である。
女と付き合った事はないが、一夜限りの経験はない訳ではないし、たまに気の昂りが抑えられなくなり、独りで行為をする事もある。
ただ、自制心が人一倍強く、日頃から自分自身を律し、鍛錬に励む事を第一としている、そう言う男なのだ。
それ故、彼は色恋に溺れる事もなく、他の男とは違い、どんな女の前でも冷静な態度を取る事が出来るのである。
勿論、自制心をここ迄強くするには、それ相応の努力があったのだが。
彼は、面倒臭そうに彼女達に訊いた。
「何だよ、おれに何か用か?」
このゾロの対応は、彼女達に取って、やはり予想外だった。
彼の迫力に圧倒されそうになり、言葉が出て来ない。
苛立ったゾロは、眉間に皺を寄せつつ少し声を荒げて、彼女達に返答を促した。
「だからよ……おれに何か用かって聞いてんだよ。用がないならさっさと行きやがれ。忙しいんだよ、おれは」
殺気立つ男に、彼女達はおどおどしながら、やっとの思いで答える。
「……あ、あの……ちょっと、その……貴方の、お洗濯の仕方が荒過ぎて……私達、静かに水浴びしたいのだけど……」
「洗濯?ああ……そりゃ、悪かったな。もう終わるからよ……ちょっと待ってろ」
男の意外に優しい返答に、女達は思わず口端を上げた。
ゾロは二重だが、その目付きは非常に悪く、凄みがあり、その上隻眼である。
左眼に付いた深く大きな刀傷が、見る者を威圧する。
彼女達も、その例外ではなかった様だ。
しかし、優しい反応を見せた彼に、彼女達は安心したのか、今度は甘い声で男を誘い始めた。
「……お兄さん、なかなかのいい男じゃない……お洗濯は後にして、私達とイイ事して遊ばない……?」
女はそう言いつつ、水面を通してゾロの下半身に一瞬視線を落とした。
彼は、相変わらず、である。
しかし、その普通の状態でも大きく太い男性に、女は思わず甘い吐息を一つ吐く。
(……ああ……久し振りのいい男……ルックスも良ければ……この大きな彼を、もっと大きく……シてあげたいわ……)