第4章 ・対峙
ゾロは目を閉じ、ふうっ、と深い溜息を吐いた。
彼の住む世界とは、別世界の歴史の話。
そして、彼自身と深い関わりがあるであろう魔神と、新しい魔界の話。
(……ここに来たのは、やっぱり必然だったんだろうな……いや、来たってより……おれは『呼ばれた』のかも知れねえ……)
彼は心の中で、そう独り言を呟いた。
どうやってこの世界に来たかは判らない。
だが、誰に呼ばれたのかは、何となく想像は付くのだが。
ゾロは、そんな事を考えつつ、ぼんやりとスモッグの掛かった空を眺め続ける。
そんな彼の脳裏に、ふと、ある疑問が浮かんだ。
(そう言やあ……なんでルシファーの奴は、四文字の奴が創った新しいトウキョウを再興したんだ……?別に、再興なんてしなくてもいい筈なのに……あいつ、人間の事、どう思ってんだろな……)
彼の頭の中に、膨大な量の情報がグルグルと駆け巡る。
色々と考えてしまったゾロは、流石に疲れたのか、それとも面倒臭くなったのか、考える事を止めてしまった。
(まあ、どうでもいいや……そんな事より、覇気と魔力をコントロール出来る様にならねえとな……)
やらなければならない事は、多々ある。
ゾロが溜息を吐いたその時。
岩の上に置いてあった赤い帯が柔らかい風に吹かれ、彼の右肩口に、ふわりと落ちて来た。
赤い帯は黒く薄汚れて、所々破れてしまっている。
(……まだ時間もあるし、ついでに服も洗っちまうか……)
彼は立ち上がり、脱ぎ捨てた服やズボンを手に取ると、そこから少し奥へ移動した。
水の深さは彼の腹位程。
彼はそこで勢い良く服を洗い始めた。
数分後、彼の背後から、女の声が聞こえて来た。
その声は少し甘ったるい、男の本能を擽る様な女の声だった。
「ちょっと、お兄さん……もう少し、優しく洗ってくれないかしら……」
「あ?」
ゾロが服を洗う手を止め後ろを振り返ると、そこには黒い羽と黒く細い尻尾が生えた金髪の美しい女が二名、水に浸かり、立っていた。
彼女達も水浴びをしていたのだろう。
透き通る水を通して、彼女達の美しい裸体が見える。
水面に揺れる長い髪の間から白く美しい豊満な胸が、チラチラとその顔を覗かせていた。
並の男であれば、雄としての欲望がすぐに爆発する程、非常に官能的で危険な香りが漂っている。