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魔王之死刀

第4章 ・対峙


 稽古が始まってから数十分程経った頃には、ゾロの体は彼自身の血で、真っ赤に染まっていた。
 
「うむ……お前の弱点や戦い方の癖は判った。少し休憩しよう。」

 二刀流の豹の姿をした魔神は一旦手を止め、ゾロに休む様促した。
 しかし彼は、首を何度か横に振りつつ、刀を構える。

「……いいや、まだ……まだやれるぞ、おれは……!!!」

 ゾロは、鬼神の様な形相でオセを睨み付けた。
 息を切らしながらも、まだ稽古に励もうとする彼の傍に、オセは一瞬で移動する。
 瞬間、閻魔を握る彼の右手首を右手で力強く掴むと、諭す様に言った。

「ゾロ、この実戦教義の目的は、まずお前の弱点や伸び代を見付ける為のものだ。己の弱点を知り、それを克服する事。お前の得意な攻撃方法を強化する事……それはお前自身も重々判っている筈だ。焦っても、逆に時間を無駄にするだけだぞ」

「……ああ……確かに、そうだな……」

「うむ、まずは一時間程休憩だ。細かい事は、それから話すとしよう」

 オセは自分を睨み付ける様に見るゾロに、笑みを浮かべてそう伝えた。
 それから、ゾロは彼から傷薬を貰うと、少し離れた場所に移動した。
 目の前に広がる美しい湖のほとり。
 彼は、そこにある岩に刀を丁寧に立て掛けると、服を脱ぎ捨て全裸になった。
 無駄な贅肉は、一切ない。
 体脂肪率は、優に十パーセントを切っている。
 鍛え上げられた彼の逞しい筋肉質の体は、日々のトレーニングが、どれ程凄まじいかを物語っていた。
 大きな古傷が残る厚く隆々とした胸板、六つに割れた逞しい腹筋、筋肉に血管が浮き出る太い両腕、一見細く見える両脚にも勿論筋肉は付いており、それは大木の様に太く逞しい。
 彼は剣士なのだが、何故か格闘家の様にも見えるのは、この立派な筋肉のせいなのだろう。
 その見事な体躯には無数の生傷が付き、そこから血が流れている。
 だが、背筋が盛り上がるその大きな背中に、刀傷等は一つも付いていなかった。
 血と汗と砂埃で汚れた体を洗い流す為、彼はザブザブと湖に入って行く。
 少し冷たい湖の水は、稽古で熱った彼の体を冷やすには、丁度良い水温であった。
 ひんやりした水が、傷口にビリビリと刺激を与える。
 が、彼は何食わぬ顔をしつつ、一度深呼吸してから水中に潜って行った。
 彼の真っ赤な血が水に溶け、流れ、消えて行く。
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