第4章 ・対峙
それが誰なのかは、今でも全く判らない。
たが、亡くなった両親ではない事は、不思議と判っていた。
その感覚は、ゾロが道場に通う頃には精神的に一人立ちをしており、既に消えていたのであるが。
そんな彼である。
サンジの生い立ちを聞いたところで、ゾロの気持ちは変わらなかった。
ゾロはサンジの事を、ルフィを支える片翼としての強さや、一味のコックとして一流の料理を作る腕を持っている事は、内心認めている。
しかし、事ある毎に自分を煽ったり、極度の女好きの為に訳の判らない言い掛かりを付けて来る彼に、ゾロは何時も苛付いていた。
(そんなにおれが気に入らねえなら、構ってくれるな)
口には出さないが、彼は心の片隅で、ずっとそう思っていたのだ。
(……わざわざ他のクルーと、ましてや……あいつと喧嘩する為に、おれはルフィの仲間になった訳じゃねえ。兄弟喧嘩がやりてえなら、別の奴を相手にしろってんだ……おれは、あいつの兄弟じゃねえんだよ)
ゾロは心の中でそう呟くと、眉間に皺を寄せて、そっぽを向いてしまった。
オセは彼の気持ちを汲みつつ、思わず苦笑する。
「……まあ、そう言うな。あのサンジと言う男は、表ではお前に食って掛かっているが、本心はそうでもない様だぞ。お前も……同じなのではないか?」
「バカな事言ってんじゃねえ。あいつがいない方がせいせいすらあ……そんなくだらねえ話はどうでもいいよ。早くやろうぜ、時間が勿体ねえ」
ゾロは、オセに視線を移すと、急かす様にそう言った。
「はっはっはっは……全く、お前らしいな。しかし、焦りも王には必要ないもの……まずは、お前の戦闘能力を、更に強化する為の教義を始めるとしよう」
「おう、望むところだ」
ゾロとオセは、ニヤリと笑い合った。
いよいよ次の教義は、ゾロが待ちに待った、実戦である。
勿論それは、真剣での稽古であった。
ゾロは麦わらの一味の戦闘員であり三刀流の剣豪、対するは古来より魔神七十二柱の一柱に数えられる、オセである。
オセは、二振りの剣での物理攻撃と魔法攻撃を織り交ぜ、ゾロに全力でぶつかった。
序盤は互角。
だが、覇王色の覇気も魔力のコントロールも未だままならない上、魔法を覚えたばかりのゾロは、徐々に不利になって行く。