第1章 ・帰還
「……これは……何と素晴らしい……」
少年は、満足そうに呟き、そして彼に言った。
「……ロロノア・ゾロ……青い星に住む三刀流の剣豪よ。良く名乗ってくれたね。君の世界で言う『覇王色の覇気』に『武装色の覇気』……そして『見聞色の覇気』……どれも体得しているとは、流石だね」
「なっ……」
ゾロと名乗った男は、自身が体得している能力を即座に言い当てられ、動揺し思わず言葉に詰まる。
(覇気を知ってやがる……やっぱり、ただモンじゃねえ……)
ゾロは心の中でそう呟いた。
少年は、彼に言う。
「確かに君は、僕が捜していた男だ」
少年の言葉に、ゾロは思わず眉を顰めた。
「お、おれを……捜してたって……?な、なんでだよ……」
彼は、訝しげな顔をして言った。
やっと目が覚めたかと思えば、そこは見た事のない、全く知らない世界。
そして今は、見た事もない異形の者達と謎の少年に囲まれている状態である。
得体の知れない者に、君を捜していた、と聞かされた彼の心中は、穏やかではない筈だ。
先程放たれたオーラは消えているが、彼は気を緩める事なく、少年を睨み続けている。
しかし少年はそんな彼に怖気付く事もなく、相変わらず平然とした体である。
「まあ……落ち着いて僕の話を聞いてくれないか。約束通り、刀はお返ししよう」
少年はそう告げると、後方の刀掛に視線を移した。
一瞬の出来事だった。
少年の背後にあった筈の刀が、突然ゾロの目の前に現れたのである。
床に置かれた三振りの刀を見て、彼は思わず目を丸くする。
(……な、何だ今の……三振り纏めて一瞬で移動させた……?こいつ『悪魔の実』の能力者か?……それとも……)
彼は心を落ち着ける為に、また一つ深呼吸をする。
そして、降参したかの様にその場に腰を降ろし胡座をかくと、背筋を伸ばし真っ直ぐに少年を見据えた。
「……少し落ち着いた様だね。ロロノア・ゾロ……僕達の世界にようこそ。僕の名は『ルイ・サイファー』だ……以後、お見知り置きを」
「ルイ・サイファー……?」
ゾロは何故か、その名を何処かで聞いた事がある様な気がした。
だが、この少年とは初対面である。
(まさか……CP9とかの仲間じゃねえだろうな……)