第3章 ・予兆
「……なるほどな、フツヌシ……お前の言う通りだ。おれと変わらねえ性格になってやがる。こいつは面白れえ……静かだが……刀の奥じゃあ誰かをぶった斬りたくて、ウズウズしてやがるぜ」
「そうだろう。三振り全て、お前の荒々しい性格を内に秘めている。頼もしい分身であり、忠実な部下だと思ってくれ。今迄以上に、お前の力になるぞ」
「ああ、勿論だ。大事にさせて貰うぜ。本当にありがとうな、フツヌシ」
ゾロは酒を目にした時と同じ様にニッコリと笑いながら、フツヌシに礼を言った。
そんなやり取りを見ていたアドラメレクが、痺れを切らした様に会話に割って入って来る。
「ちょっと、貴方っ!!そんな難しいお話はいいから、早く私が仕立てた服に着替えてみて頂戴っ!!!」
「あ、いや……この服は、オセとの修業の後で着るよ。実戦もあるからよ、せっかく作ってくれた服が、またボロボロになっちまう」
着替えを急かすアドラメレクに、ゾロは右手で頭を掻きながらそう言った。
アドラメレクは肩を落とし、急にローテンションになる。
「ええーっ?何よー!!せっかくあなたの生着替えセクシーシーンが見れると思って楽しみにしてたのにいー!!」
「あ、あぁ!?なんでおれの着替えてる所をお前に見せなきゃなんねーんだよ!!変態エロウマクジャクかおめーは!!!」
「キャーッ!!失礼ねっ!!!私はロバよっ!!このイケメン筋肉緑頭男前バカっ!!大体ねえ、貴方っ、ファッションセンスがなさ過ぎなのよっ!!黒の着流しで上半身裸なのはイケてるけど、緑の腹巻きなんてダサ過ぎなのよっ!!ヤングメンなのになんで腹巻きなんてしてるのよっ!!折角の男前が台無しじゃないのよっ!!!」
「うるせー!!余計なお世話だっ!!おれぁ、戦い易けりゃ格好なんて関係ねえんだっ!!!このド派手変態ウマロバクジャクサンバオカマ野郎がっ!!!」
早口で捲し立てるアラドメレクに、ゾロは声を荒げて言い返した。
彼の目は吊り上がり、米神に太い血管が二、三本浮き出ている。
そんな彼等のやり取りを見ていた仲魔達は、暫くの間、大笑いするのだった。
「やれやれ……新しき魔王は、少々騒がしい一面がある様だな……まあ元気なのはいい事だが」
彼等の言い合う姿を見ながら、フツヌシは独り、そう言って苦笑した。