第3章 ・予兆
「実戦か……勿論お前が相手なんだろ?楽しみにしてるぜ」
ゾロが口端を上げたその時、またしてもその場に二体の仲魔が現れた。
一体は胡座をかいた姿で宙に浮き、腹に晒を巻いた長髪の男。
もう一体はロバの姿で背中に孔雀の羽が生えた、非常に派手な装いをした魔神である。
そのロバの姿をした者が、口を開く。
「ゾロ、お・ま・た・せーっ!!貴方のお洋服、仕上がったから持って来たわよぉ。帯刀ベルトも作ったんだからっ!!!早速着替えるといいわよ、フォーウ!!!」
「アドラメレク……お前は本当、テンション高っけえなあ……おい」
ド派手かつハイテンションで目の前に登場した仲魔の姿に、ゾロは呆れてそう言った。
そして今度は、長髪の男が口を開く。
「ワシも、お前の刀が全て仕上がったのでのう、持って来てやったぞ。さあ、受け取るがいい」
「……おう、手間掛けさせたな。お前等、ありがとうな」
ゾロは腰を上げそう礼を言うと、ロバの姿をした者から服を数着、長髪の男から刀を三振り受け取った。
彼はデカラビアから貰った本と服を岩の上に置くと、早速三振りの刀を右腰に差した。
そして刀を一振り、ゆっくりと抜刀する。
抜いた刀は三代鬼徹。
この刀を手にした者は必ず落命すると、ゾロの住む世界に伝わる、曰く付きの妖刀である。
ゾロは刀を目にしただけで妖刀かどうかが判る男で、この刀を見た時も即座に『妖刀』と判断したのだ。
彼は、手にした鬼徹を鋭い目付きでまじまじと見ながら、長髪の男に言う。
「……フツヌシ、前と違うな……こいつ。おれの血をソーマと古竜岩の鍛石の粉末と神金……だっけか?混ぜて研ぎ直しただけで、こんなに変わるのか……」
フツヌシと呼ばれた長髪の男は頷き、ゾロの問い掛けに返答する。
「まあ、そこ迄の刀にするには、他にも色々と工程があるのだがな……詳しくは、後日話そう。それより、どうだ。使い勝手は良さそうか?」
「……ああ、いい感じだぜ。こいつは、おれに忠実な刀だ。さて、問題はこいつか……」
ゾロは三代鬼徹を鞘に収めながら、視線を閻魔に移す。
閻魔は非常に真面目な性格の刀で、対象を斬る為に、持ち主の覇気を大量に放出させてしまうのである。