第3章 ・予兆
「へえ、お前の使い魔って、情報収集屋なのか?」
「それだけが任務ではないぞ。他にも偵察や尾行、吾輩を呼び出したニンゲンの守護等も奴等の任務なのだ。『使い魔』は吾輩の優秀な部下……タダの鳥ではない事が、判ったであろう」
こうして、デカラビアの講義は続いた。
ゾロは胡座を搔いた姿勢で時折質問したり頷いたりしながら、ノートにメモを取って行く。
休憩時間を挟みつつ、更に講義は続いて行った。
一日目が過ぎようとしていた頃には、講義も終わりに近付いていた。
講義終了の証に、デカラビアはゾロに薬草に関する書物と、宝石に関する書物を手渡した。
二冊共、黒の革表紙に金色と銀色の魔導文字と幾何学模様で美しく装丁された、何とも立派な書物である。
ゾロは、思わず目を丸くする。
「こんな凄え本……本当にいいのかよ」
「勿論だ。吾輩の講義を最後迄、真面目に受けた褒美だ……遠慮なく受け取るが良い。役立ててくれ」
「ああ、今回の勉強と言い、この本と言い、ムチャクチャ役に立つよ。本当にありがとな、デカラビア」
「うむ、うむ……これからも聞きたい事があれば、何なりと申すが良い。お前には皆がビックリする程の、素晴らしい魔王になって貰いたいからのう」
デカラビアはそう言いつつ、目尻を下げクルクルと回った。
その時、その場に見覚えのある者が彼等の前に姿を現した。
その者は、オセであった。
彼はゾロとデカラビアの姿を目にするなり、声を掛ける。
「おい、どうだ、教義の方は……順調か?」
「おお、オセではないか。うむ、この一日で、吾輩の教えを良く学びおったぞ。ついでと言っては何だが、アイテムの保管術と瞬間移動術も教えておいたぞ」
「そうか、そこ迄学んだのは流石だな。ところでゾロ、お前の刀と服が仕上がったそうだぞ。後でフツヌシとアドラメレクがここに持って来るから、楽しみにしておいてくれ」
「あぁ?もう出来たのかよ……随分速えぇな、おい……」
「我々が手掛ける仕事は、迅速かつ丁寧……大抵のものはすぐに仕上げてしまうのだ。さて、次はおれの講義だぞ。実戦に近い稽古もあるから、少し休憩するといい」