第3章 ・予兆
寧ろ、危険と隣り合わせで生きる事こそ、彼が望んでいる人生なのだ。
だが、この静かで美しい庭園の風景、そして愉快な仲魔達との何気ない会話が、そんな好戦的なゾロの心を解し、癒している事に間違いはなかった。
ゾロは余程デカラビアの怒り方が可笑しかったのか、腹を抱えて大笑いしている。
彼等のやり取りを一部始終見ていたフォルネウスも、必死に笑いを堪えている有様だ。
デカラビアは相変わらず目尻を突り上げ、クルクルと何度も回りながら、怒り続けていた。
「お前達、一体何が可笑しいのだっ!!!吾輩は、真面目に怒っているのだっ!!!ぷんすかっ!!!ぷんすかっ!!!」
「い……いや、悪りい……そ、そ、そんなつもりはなかったんだけどよ……お、お前の怒り方がよお……」
ゾロは必死で笑いを堪え真顔になろうとするが、顔がニヤ付いてなかなか真顔になれない。
彼はまた、下を向いてしまった。
デカラビアは深い溜息を一つ吐くと、星型の体を少し萎えさせつつ、ゾロと親友の顔を交互に見る。
「……まあ、もう良いわ……ここから先は吾輩、デカラビアが教授する。真面目に学ぶ様に……判っておろうな、ロロノア・ゾロ」
「……おう、判ってるよ。宜しくな、デカラビア」
やっと笑いが治まったゾロは、ふうっと息を吐き、微笑んでそう答えた。
そんなデカラビアの授業も、ゾロに取って非常に有益なものであった。
ゾロに取って、と言うよりは『彼の仲間達に取って』と言った方が良いのかも知れない。
宝石の知識は、お宝に目のない航海士であるナミに、薬草の知識は船医であるチョッパーに、すぐにでも教えたい内容であった。
ゾロはそれらの知識はないに等しい状態であるが、彼等に伝える為、そして自分の為に、終始デカラビアの話に集中する。
「……お前達の世界にも、我々の仲魔は少なからず存在しておる。動物や海洋生物等……勿論、吾輩が使役する鳥達の中にもな。普通の鳥でも、それらの仲魔になっている者がいるのだ」
「そうか……やたらに獲って食うなって……そう言う事なのか」
「そうだ……まあ奴等は、そう簡単にニンゲンに捕まる事はないがな。それから、普通の鳥か吾輩の使い魔、若しくはその仲魔かは、お前なら見ればすぐに判る。出会った時は声を掛けてやってくれ。お前達に必要な情報を知り、教えてくれる者もいるからのう」
