第3章 ・予兆
「な、な、な、なんで、なんで君の様な美しいレディが、あのむさ苦しい筋肉脳筋マリモと……おと、おと、お友達ーっ!!?ちきしょーっ!!あのクソマリモ野郎!!戻って来たら絶対、ぜーったい許さねえからなっ!!!」
サンジの頭の中は、ゾロに対する嫉妬と怒り、いやそれ以上に、女の事ばかりでピンク色に染まる。
怒りとエロシチズムが交錯する彼の頭の中は、酷い混沌状態に陥った。
流石の少女も顔が引き攣り、唖然とする他なかった。
(……永年ニンゲンの男を見て来てはいるが、何と色欲の強い男だ……永きに渡り、夢魔達が喜んでこの様なニンゲンに取り憑くのは、無理もない……しかし……奴に対するこの強い嫉妬心……こいつは一体、奴の何を羨んでいるのだ……)
少女は、気を取り直す様に一呼吸置いてから、再び口を開く。
「……では、確かに伝えたからね。頼んだよ、サンジ君」
「あああっ……ちょっと、ちょっと待って、美しいレディ!!!君の名は……!!!」
サンジに呼び止められた少女は、また冷たく鋭い視線を彼に向けると、ゆっくりとした口調で言った。
「……私の名は、ルイ・サイファー……ルイ……とでも、呼んでくれ給え……」
「おおおっ、お呼びしますとも、ルイちゅわんっ!!」
サンジは両手を上げて、バレリーナの様にクルクルと何度か回った。
少女はそんな彼に更に冷たい視線を向け、忠告をする。
「……サンジ君、君はくれぐれも女性に気を付け給え……ニンゲンの女性にも、女性悪魔にも、ね」
「うおおおおおっ!!?女性悪魔っ……なんてステキな言葉の響きっ!!悪魔のお姉さんでもいいっ!!是非っ、是非お会いしたいっ!!!」
少女はハイテンションのサンジを余所に、彼に背を向けその場から立ち去ろうとしたが、ふと、再びサンジの方に向き直った。
「ああ……そうそう、言い忘れる所だった……一週間後にゾロに再会した時……彼は恐らく、君達の知っているゾロではないかも知れないよ……今迄のゾロだとは思わない方がいい……判ったね?サンジ君……確かに、伝えたよ……」
それを聞いたサンジは、一瞬我に返り、少女を呼び止める。
「え……ちょ、ちょっと待ってくれ、ルイちゃん……それは一体どう言う事……うわっ……!!」