第1章 ・帰還
五芒星の姿をした者の青い大きな瞳に、金髪の美少年の姿が映り込む。
まだ十七、八才程であろうか。
少年は、右に金色の瞳、左に銀色の瞳を持っていた。
その美しいオッドアイが、一瞬鋭い光を放つ。
黒のハンティング帽に黒のスーツが良く似合う、気品に溢れたその少年は、床に横たわる男を一瞥する。
「皆、大義だったね。デカラビアの言う通り、僕が捜していたのは……間違いなくこの男だ」
少年の言葉に、一同はまた頭を下げた。
「ふむ、べリアル卿……この男を助けてくれたのか。流石、素晴らしい判断だ、有毒物質も全く発生していない。この通り、礼を申し上げる」
少年は嬉しそうにそう言うと、べリアルに目を遣った。
「ははっ……閣下、何と勿体ないお言葉。ありがたき幸せにございます」
べリアルは跪きながら、更に頭を下げる。
少年はそんな彼を右手で制止すると、べリアルはようやく頭を上げるのだった。
「さてしかし、全身の骨が折れる程の重傷を負っていたか……副作用の強い薬を使って無理矢理回復させて尚、戦った様だね。肉体が死んでしまっても無理はない」
少年は男に視線を移すなり、そう言い溜息を一つ吐く。
「やはり……本来持っている力を発揮出来ずにいる……心……魂も自由を奪われている状態だ……原因は、やはり『あの者』にある様だね。どれ、それを取り払う『切っ掛け』を与えるとしようか」
男を見詰める少年の視線が、今度は跪く者達に向けられた。
「……皆、この者を速やかに復活させよ。僕は『あの者の魂』を、ここに呼び寄せる」
「御意!!」
少年の命令に彼等は一言、そう返答するや、すぐに立ち上がった。
紅い龍の姿をした者が、五芒星の姿をした者に声を掛ける。
「……デカラビアよ、頼んだぞ」
「うむ、早速……『サマリカーム』……!」
五芒星の姿をした『デカラビア』と名を呼ばれた者が、クルクルと体を回転させつつ呪文を唱える。
すると、白く眩い光が男の体を包み込んで行った。
「う……うう……」
驚いた事に、死んだ筈の男は一瞬で息を吹き返した。
ぼんやりする頭を右手で支えながら、ゆっくりと上半身を起こし辺りを見回す。