第2章 ・血脈
今迄も、何度か戦闘中にその鱗片が現れていたのだが、当のゾロは自分で気付く事がなかったのだ。
眉を顰めている彼を見るなり、大魔王は思わず声を出して笑い始めた。
「これは……ふ、ふふふ……ははははは……!!全く面白い男だ。君は今迄、全く気付いてなかったのかい?まだ不安定ではあるが……君は立派な覇王色の覇気の持ち主なんだよ。いやいや……実に……今日は本当に愉快な日だ」
魔界の主が大笑いしたのは何百年、いや何千年振りの事であろうか。
長きに渡り唯一神への復讐心、そして自由を追求する事しか考えていなかった彼が、声を出して笑ったのだ。
魔界の主の笑顔を長年目にしていなかった四名は、明るい表情を見せている。
一方のゾロは少々気不味そうに、左手で頭を掻き毟っていた。
「そ……そんなに笑う事ねえだろがよ……しっかし、おれが覇王色の覇気を……全然気付かなかったぜ……」
覇王色の覇気は、使用者よりも力が劣る者達を複数人纏めて気絶させたり、戦意を喪失させる事が出来る特殊能力である。
生まれ付き、王の資質を持つ者だけに備わる能力と言われており、その確率は数百万人に一人と言われている、未だに謎の多い能力である。
そんな能力を持っている事に気付かなかったゾロであるが、ふと、ある事を思い出す。
「そう言やあ……カイドウの奴……戦ってた時に、そんな事言ってたな……」
カイドウに、ゾロが渾身の一撃を食らわせた直後の事だった。
『お前も、覇王色の覇気を……?』
そう訊かれたのだ。
身に覚えのないゾロは、その時は否定したのであるが、自分が覇王色の覇気を持っている等、全く考えた事もなかったのだ。
彼は、見聞色、武装色、そして覇王色の全ての覇気使いとなっていたのである。
ルシファーは言った。
「そうだろ?君は、三種類の覇気を使えるんだ。そしてその覇気を、魔力に変換出来る特殊能力も持っている」
「は、覇気を魔力に変える……?そんな事、出来んのかよ……」
「勿論さ。それから、その刀……ちょっと気になる事があってね。ゾロ、閻魔を僕に見せてくれないか?」
「あ?ああ……構わねえが、こいつがどうかしたか?」
ゾロは小首を傾げながら、閻魔をルシファーに手渡した。
刀を受け取った大魔王は、静かに鞘から刀を抜くと、それをじっと見詰め、少ししてから口を開いた。
