第2章 ・血脈
そして今度は人間の顔をした、二本脚で立つ紅い龍が、口を開く。
「わしは魔神七十二柱、序列は六十八番目のベリアルである。真魔界にある都市の王を務めておる。あらゆる使い魔の情報に精通しておる。魔王となる若き仲魔よ、何卒よしなに……コンゴトモ、ヨロシク……」
そして最後に、デカラビアがクルリと一つ回転し、大きな瞳をゾロに向けて言う。
「吾輩デカラビアは、薬草や宝石の性質や効能についての知識を豊富に持っているのだ。きっとお前の役に立つであろう……コンゴトモ、ヨロシク……」
「おう!!おれの方こそ、これから色々世話になるぜ。えーと……お前等……コンゴトモ、ヨロシク……な」
ゾロは、自己紹介を終えた四名に、笑いながらそう挨拶して見せた。
ルシファーはそんな彼等の様子に微笑みつつ、授業の指示を出す。
「では、早速だが……まずは我々魔神が使う『魔導文字』を覚えて貰う事にしよう。フォルネウス……宜しく頼むよ」
「ははっ、お任せ下さいませ」
大魔王から指示を受けたフォルネウスが、丁寧に返答する。
ゾロは困惑した表情を浮かべつつ、ルシファーに言った。
「魔導文字だって……?おれの世界で使ってる字だって覚えるのに時間掛るのによ……そんなの、短期間で覚えれねえぜ?」
「大丈夫だ、恐らくすぐに覚えられるよ。君の体には先祖である魔王の血の他に、べリアル卿の血も流れているんだからね」
ルシファーの言葉に、ゾロはまたしでも驚いた。
ここに来てから彼は驚かされる事の連続で、内心は追い付いて行くのに必死である。
「……え?な、なんでベリアルの血がおれの体に入ってんだよ……」
「ゾロ、君はこのダアトで発見された当初、肉体は死んでいた状態だったんだよ。出血が酷かったんだが、べリアル卿が助けてくれたんだ。彼は己の血を、君に分け与えたんだよ」
ゾロの気持ちを落ち着かせる様に、ルシファーは静かな口調で、彼の身に起きていた出来事を教えた。
「あ、あぁ!?おれ……死んでたのか?」
ゾロは、思わず目を丸くした。
そんな彼に、ベリアルは笑って答える。
「お前さんが経験したのは、ニンゲンとしての『死』……閣下も申し上げた通り、我々が言う死は、魂が完全に消滅した時。魂は滅多な事では消えん。魂が生きておったら、死んだ事にはならんのだ。安心せい!我々は、不滅なのじゃ」
