第2章 ・血脈
(ルシファー……?やっぱりおれは、こいつを知ってる……でも、何でだ……?)
ゾロは心の中でそう呟いたが、何故か聞こうとはしなかった。
ルシファーと名乗った少年は、そんな彼の心中を知る素振りも見せず、話し続ける。
「それから、因みにこの姿も……」
「……仮の姿、なんだろ?お前の本当の姿は……羽の生えた、紅い蛇か黒い蛇の、どっちかなんじゃねえのか?」
ゾロは、元から知っているかの様に特に驚きもせず、そう言った。
彼は先程の戦闘中に見た、巨大な紅い蛇の姿と、巨大な黒い蛇の姿を思い浮かべる。
しかしルシファーは、首を横に振って答えた。
「残念だけど、それは違うよ。君が見たその蛇は、また別の魔王だ。紅い蛇は、今はもう一つの魔界……他の魔王達と元々の魔界……真魔界を治めているんだ」
「あ……?そ、そうなのか?てっきり、お前だと思っちまったぜ」
ゾロはそう言い、一呼吸置いてから、思い切った様にルシファーに訊ねる。
「なあ、会えるか?そいつに……」
「勿論会えるよ。黒い蛇の魔王には会えないけど……紅い蛇の魔王になら会える……会いたいかい?」
ルシファーの言葉に、ゾロは大きく頷き答える。
「ああ……ちょっと会ってみてえ。どんな奴なのか……実際に会ってみてえんだ」
「そうか、それなら……丁度五日後に魔王族の集会があるから、僕達と一緒に行こう。その前に、修業だね……さあ、皆、こちらへ」
「はっ」
奥に控えていたべリアルを始め、他二名の者が口を揃えて答えると、一瞬でルシファーの隣に移動した。
「ゾロ、これから君はこのダアトで色々学ぶ事になるのだが……彼等が君の教授だ。皆、自己紹介を」
ルシファーはそう言うと、彼の隣に控えている、エイの姿をした者が口を開く。
「新しき仲魔、ゾロよ。わしは名をフォルネウスと申す。魔神七十二柱、序列三十番目の大公爵じゃ。修辞学、語学を専門としておる。コンゴトモ、ヨロシク……」
次に、豹の顔と体を持つ、人間の様に仁王立ちする者が、口を開く。
「おれの名はオセ。魔神七十二柱、序列は五十七番目……職務は魔界の大総裁だ。教養学、神学専門だが、剣技や戦闘に関する教授も得意としている。新たな魔王になる者……ゾロよ、判らない事があれば、遠慮なく何なりと聞いてくれ。コンゴトモ、ヨロシク……」