第2章 ・血脈
「僕達は戦いに敗れ、天から落とされたんだ。それで僕達は、奴等から堕天使や悪魔と呼ばれる様になって、ニンゲンからもそう呼ばれる様になったのさ。そして僕は皆から『大魔王』と呼ばれる様になり……皆は今も昔と変わらずに、永い間、ずっとずっと、僕に付いて来てくれているんだ」
少年の話を聞いたゾロの全身に、鳥肌が立った。
ゾロは少年に恐る恐る訊ねる。
「神との戦い……本当にあったのかよ……で、お前、その神と……そいつと、戦って負けちまったのか……?」
「ああ、最初は負けてしまったけどね。でも、その永い戦いがやっと終焉を迎えたんだ……僕に永きに渡って付いて来てくれた、数多くの仲魔達のお陰だ。憎き神の魂を徹底的に砕き消した後、奴等の残党と戦い……三年前に勝利を収めたんだよ。僕達の完全勝利さ」
少年は、そう言い静かに微笑み、驚愕するゾロの顔を見詰めた。
神と言われる存在と、悪魔と呼ばれる存在の戦い。
ゾロは、神と言う存在が実際に目の前にいたとしても、絶対に媚びないと言う、確固たる信念を持っていた。
神と名乗った人間は、長い歴史の中で山程いる。
だが、彼の目の前にいるのは、紛れもない人外の生命体である。
その人外である元天使だった者が悪魔となり、神に勝利したと言うのだ。
そして、彼の目の前にいるこの少年は、永きに渡り数多の魔神を従え、この魔界を統治している『大魔王』なのである。
何時も冷静沈着に対応する彼とは思えない程、ゾロは完全に少年に圧倒されていた。
「お前……本当に、マジで凄え奴なんだな……」
ポツリと言葉少なく呟くゾロに、デカラビアがクルリと回りながら言う。
「……当たり前だ。二つの魔界を統べられ、そしてニンゲン世界……いや、今や全宇宙をもご自身の『庭』とされる魔王の中の魔王……恐れ多くも、大魔王閣下であらせられるぞ。今のお前よりも力も格も遥かに上である……その事を忘れるな」
ただただ驚愕するゾロを一瞥しつつ、デカラビアは誇らし気に、主である少年をそう言って讃えた。
そんな星型の魔神を、魔界を統べる大魔王は笑いながら軽く咎める。
「はははっ……いいんだよ、デカラビア。全く問題ないよ。ゾロは僕達の仲魔であり……何より、僕はゾロを、心からの友だと思っているからね」
「あ?おれを……か?おいおい……さっき会ったばっかりだろ……?」
