第2章 ・血脈
契約書には、こう書かれていた。
『一、貴殿は、我々魔神族の同志であり、大切な仲魔であり、偉大な魔王である。
ニ、真魔界、ダアト、各同志が管轄する地域、及び仲魔に異変があった際は、速やかに指示に従い手助けする事。
三、個々の行動は自由である。
但し、仲魔への裏切りは重罪とする。
四、貴殿は魔王族の一員である。
常に魔王たる自覚を持ち、それを心掛ける事とする。
五、貴殿に支払われる報酬は、貴殿が在籍する世界通貨と、魔界の通貨に分けて支払われる事とする。
毎月十万ベリーと十万魔貨+出来高を支払う事とする。
報酬は、青い星の時間で毎月六日の朝六時に、貴殿に配布される魔導金庫に入金される。
また、この金額は定期的に見直され、増額される事とする。
六、魔界全軍の総指揮官は大魔王ルシファーである。
有事の際は大魔王の指示に速やかに従う事とする。以上』
契約書には、やはり『魔王である』としっかり書かれていた。
ゾロは、思わず生唾を飲み込んだ。
しかし、魔王とは、一体何なのか。
ゾロは、自分の目の前でしゃがみ込んでいる少年に、真顔で訊ねる。
「……おい、魔王ってよ……何すりゃいいんだ?城に閉じ籠もって椅子に踏ん反り返ってればいいのか?それとも、どっかで暴れてりゃいいのか?」
聞いた少年は、一瞬呆気に取られたが、すぐにクスクスと笑い始める。
「ゾロ……君はなんて愉快な男なんだ。魔王と言っても沢山いてね、それぞれ役割や仕事があるんだよ。それについては、後日話そう」
「へえ、仕事なんてあんだ……お前等、結構真面目なんだな」
「真面目か……今迄言われた事もないよ。君が初めてだよ、僕達の事を真面目なんて言ったのは」
ゾロの口から出た予想外の言葉に、少年は静かに笑顔を見せる。
そんな少年にゾロは笑みで返すと、再びその視線を契約書に移した。
「しかし……報酬も貰えるのは凄えよな。悪魔も給料制なんて、ちょっと驚きだぜ」
「僕の部下達には、永い間、身を粉にして働いて貰っているからね。まあ……君は、魔王族に属したばかりだから最低金額だけど……後々増額になるから、今はそれで宜しくお願いしたい」
「何言ってんだ!!おれは悪魔見習いになったばっかりだぜ?貰えるだけでも嬉しいよ。本当にありがとうな」