第2章 ・血脈
(おれぁ、もっともっと強くなれる……必ず強くなってやるぜ!!)
ゾロは満面の笑みを浮かべ、手放しで喜んでいる。
少年はそんなゾロの嬉しそうな顔を見ながら、右の掌を上に向けた。
するとその掌の上に、青い光と共に羊皮紙が一枚、一瞬で現れた。
「さて、話が決まった所で……まず、これにサインをして貰おうかな?これは、君が僕達の仲魔である事、後々魔王に就任する事、それから……」
「ああ、判った判った。つまりは、契約しろって事だろ?めんどくせえ……って……ちょ、ちょっと待て!!ま、魔王だって!!?お、おれが……魔王!!!?」
少年の言葉に、ゾロは驚愕する他なかった。
短時間の間で驚きの連続に遭遇する等、誰が考えるであろうか。
目を白黒させる彼とは対照的に、少年は当たり前の様な顔をして言った。
「そうだよ。さっきも言ったけど、君は僕と同じ魔王族……君も魔王になるんだよ。その為に、ここで色々学んで貰いたいのさ」
「ま、魔王族の一員ってだけじゃなかったのかよ……なあ、魔王ってよ……大剣豪より凄げえんだよな」
ゾロの素朴な問いに、少年は答える。
「勿論だよ。君達の言う大剣豪は、ニンゲンの世界では凄い称号だけど……僕達はニンゲンよりも遥かに高次元に生きる存在だ。ニンゲンは神にも魔王にもなれないからね、凄い事だと思うよ」
少年は笑いながら、相変わらず胡座を搔いて唖然としているゾロの前に進み出ると、そこにしゃがみ込む。
(……まさか、このおれが『王』になるとはな……ルフィ、どうやらおれは、魔王としてお前を支える事になりそうだせ……)
ゾロの脳裏に、海賊王を目指すルフィの笑顔が浮かぶ。
彼は心の中で、そう呟かずにはいられなかった。
少年は、そんなゾロの顔を見ると、微笑まずにいられなかった。
「さて、これが契約書だよ。良く読んで納得してからサインしてくれ。勿論、サインしない事も出来るけど……まあ、全ては、君の自由だ」
少年はそう言い、契約書と黒い羽の付いたペンを、直接彼に手渡した。
少年は、日頃から体を鍛えているゾロよりもずっと細く、華奢な体付きをしているのだが、その内面から湧き上がる目に見えぬ魔力を、ゾロはひしひしと感じていた。
ゾロは少年の力を感じながら、契約書とペンを受け取ると、それに書かれている内容を一通り読み始る。