第2章 ・血脈
「こりゃ凄えや、こんな酒、今迄飲んだ事ねえよ……これがありゃあ、何度でも戦えるな。デカラビア、ありがとう」
笑顔で礼を言う彼に、デカラビアは目尻を下げつつ、クルリと一つ回って見せる。
「いやいや、礼なら閣下に申し上げてくれ。それから朗報だが……お前の大事な船長が、カイドウに勝ったぞ」
「ルフィが……勝ったのか!!!やっぱり、流石はこのおれの上に立つ船長だ。そうでなきゃ困る……絶対勝つと思ってたぜ!!!」
ゾロは満足そうに腕組みしつつ、満面の笑みを浮かべて心の底から喜んだ。
そんな彼に少年は、笑顔を見せつつ静かに話し掛ける。
「……さて、我等が同志……ゾロよ。君に提案があるのだが……聞いてくれるかな?」
「提案?なんだ?」
ゾロは顔を上げ、少年の顔を見た。
腕組みしながら首を傾げているゾロに、少年は言う。
「君は一刻も早く仲間の所に戻りたいだろうが……君は魔力を使った戦闘方法の知識はないに等しい。そこで一週間程、ここで色々と学んで欲しいんだ……僕達自身の事、魔界の事……そして、別の世界の事もね」
「……一週間……」
ゾロは少年の顔を見詰めつつ、少し考えてから口を開いた。
「いやあ、ここで修業出来るなら、そりゃ願ってもない事だけどよ……まあ、あいつ等の事だから、心配なんてしねえと思うが……一週間だろ?その間、流石に騒いで捜し捲ると思うんだ……特に、うちの船長がよ……」
ゾロの脳裏に、ルフィの焦る顔が浮かぶ。
『おれは、ゾロがいねえと、お前等がいねえと海賊王になれねえんだ!!!』
ゾロは思わず、大きな溜息を一つ吐いた。
一週間も行方不明の状態が続けば、ルフィは間違いなく狂った様に捜し回る事だろう。
少年は、彼の心の内を読んだのか、笑みを浮かべつつ頷き答える。
「ああ、それなら心配ない。彼等には君が一週間後に戻る事を伝えておくよ。まあ……彼等は君が魔界にいるって事は、信じないと思うけどね」
「あいつ等に伝えてくれるのか?そりゃありがてえ話だ。色々悪りィな……それじゃ一週間、世話になるぜ」
経験した事のない、異界での修業である。
ゾロは心が踊って仕方なかった。
隠れていた魔の力を覚醒させた今、彼自身も、自分が何処迄強くなれるのか、楽しみで仕方なかった。