第17章 …不惜身命
縁側を歩いて行くゾロの後ろ姿を見ながら、目の前で悲しそうに俯いている日和に声を掛ける。
「日和さん……なんかあったんすか?」
「あ、い、いえ……何も……ごめんなさい、宴の用意がありますので、失礼致します……」
彼女は顔も上げずにそう言い、静かにその場を立ち去った。
サンジは部屋に入って行くゾロの姿を目にしつつ、思わず独り言を呟く。
「マリモの奴……日和さんに何か失礼な事を言いやがったな……!しっかし、なんであのカタブツマリモの周りにばっかり、こうもレディーが集まるんだ……!!」
サンジの心の片隅に、沸々と湧き上がる黒い感情。
『何故何時も、おれじゃないのか』
サンジの心の深い場所で、ゾロに対する嫉妬が黒い渦となって行く。
そのどす黒い思念にゾロは気付いていたのだが、敢えて振り向きもせず、静かに襖を開けて部屋に入って行った。
部屋では、チョッパーが布団の傍らに座り、ハーデスの顔を心配そうに覗き込んでいた。
布団の中のハーデスは、先程よりも更に小さく丸まり、小刻みに震えている。
「ゾロ……! なんか急に容体が悪くなったみたいなんだ。体も冷たいし……」
慌てる船医に、ゾロは落ち着いた声色で言った。
「チョッパー、落ち着け……海から上がったばかりで、まだ体が芯から冷えてんだろ。体が暖かくなりゃ、元気になるんじゃねえか?」
「えっ? あ、そうか……! 体を温める薬草茶を飲ませれば……!おれ、医者なのにすっかり忘れてた……ゾロ、急いで煎じて来るから、ハーデスを見ててくれ」
「おう、頼むぜ」
チョッパーが小走りで部屋を出て行き、部屋に静寂が戻る。
ゾロは布団の傍らに歩み寄ると、背の刀を降ろして、そこに座り胡座を搔いた。
ハーデスは布団を被り、彼に背中を向けたまま。
彼女の心の奥底から立ち上る、負の思念。
日和の言葉に打ちのめされた哀しみが、ゾロの心にビリビリと伝わり続けていた。
「……おい」
低く、柔らかな声でそう呼び掛けた。
ハーデスはびくりと肩を震わせたが、彼に背中を向けたまま、布団の中で涙を堪えていた。
か細い声で、彼女は言った。
「……申し訳、ありません……あの様な、美しく高貴な方が……貴方のお傍に居られるのに……私の様な者が、側近等と……」
「バカ言ってんじゃねえよ」