第17章 …不惜身命
「……あの日、お前に助けられた事には感謝してる。だがな……添い寝はお前が勝手にやった事だろ……それを盾に、おれの大事な仲間を傷付ける様な真似は、二度とすんじゃねえ」
数日前、ゾロはワノ国・鈴後で鎌ぞうに追われていた日和を助けた。
しかし彼は、その鎌ぞうとの戦いで重傷を負い、逆に彼女に助けられたのだ。
彼女が光月家の娘である事を知ったのは、その時だった。
日和は、強く男らしいゾロに淡い恋心を抱いていた。
しかし……ゾロにそれを受け止める気持ちは微塵もない。
それどころか、遠くから彼を慕って海を渡って来た少女を守ろうとしている。
日和は少なからず、ショックを受けた。
その時、ゾロが背負っている刀……三振りの内の一振り……『閻魔』の柄が彼女の視界に入った。
父である、おでんの形見。
その刀は今、強大な力を纏うゾロの背中に、真の主を得たかの様に鎮まっている。
ゾロの右目が、彼女の心の奥底を貫く様に、更に鋭い光を放つ。
「お前から譲り受けた『閻魔』……このおれに託してくれた事にも感謝してるぜ。だが……それとこれとは話は別だ」
ゾロの低い声が、静かな縁側と庭園に響く。
「この閻魔は、ワノ国の国宝『秋水』の代わりにお前から貰った刀だ……お前はこいつを、おれの気を引く為なんぞに託した訳じゃねえだろう」
その言葉に、日和は、はっとして俯き、そして静かに頷いた。
(そう……あの時、秋水を取り戻す為に父の形見を差し出したのは……ワノ国を救う為の決断……それだけだった……)
日和の思念が、静かにゾロに届く。
剣豪は終始、声を荒げる事はなかった。
だがその声は……彼女の甘えを断ち切る刃の様に鋭く、冷たかった。
「お前は光月おでんの娘であり、このワノ国を背負って立つ光月モモの助の姉貴だろ。一国の頂に立つべき家の娘が、あんな下らねえ軽口叩いてどうすんだ……もっと誇りを持てよ」
女としての小さな嫉妬心から、無意識のうちに侍……おでんの娘としての矜持を忘れた振る舞いをしていた自分を、これ以上ない程に鋭く指摘されたのだ。
顔を真っ赤にして俯く日和に、ゾロは背を向ける。
「……宴の準備があるんだろ。もう戻れ」
そう言い残し、ハーデスの居る部屋へと向かう。
そこへ中庭の奥から、煙草を吸い終わったサンジが姿を現した。