第17章 …不惜身命
「……顔見知りなだけだ。あいつはまだ疲れて寝てるからよ、静かにしといてやってくれ」
それだけ答えて、縁側に出た。
縁側は広い中庭へと繋がっており、ゾロはその中庭に目を遣りながら、ゆっくりと歩を進めた。
その奥から、何やら楽し気な声が聞こえて来る。
松の木や数点の盆栽が置かれた静かで落ち着きのある庭園に、大きな池が広がっている。
その池の奥……本来なら静寂を楽しむべきその空間を、二人の大きな笑い声が台無しにしていた。
「ほらあ、ウソップ!こいつ等本当でっけえぞ!!」
「しっかし、良く食うなー、こいつ等。餌が幾らあっても足りねえな」
騒いでいたのは、ルフィとウソップだった。
そんな彼等に、ゾロは呆れつつ声を掛ける。
「……何やってんだ、お前等」
「ん? おー、ゾロ! いやー、今こいつ等に餌やってたんだ。すっげえ食うんだぞ、こいつ等」
そう言い無邪気に笑う船長から、ゾロが池に視線を移す。
そこには立派な錦鯉が数十匹、二人が投げ入れる餌に食い付きつつ、水飛沫を上げていた。
ゾロは、ふっ、と笑うと、ルフィに視線を戻した。
何時もと違う、真剣な眼差し。
もしやと気付いたウソップが、声を顰めてゾロに訊ねる。
「ゾロ……もしかして、あの溺れてた奴……何かあったのかよ……」
ネガティブ思考のウソップは、彼女の身に、何か良くない事があったと思ったのだろう。
だが、ゾロの返事はその逆だった。
「ああ……さっき起きた。お陰さんで元気だぜ」
「お、そ、そうか……!目覚めて良かったな!!」
安堵するウソップにゾロは口端を上げると、ルフィに向き直って静かな口調で話を切り出した。
「その、奴の事なんだけどよ……ルフィ、一つ頼みがある」
そう言うゾロの声色は、普段のそれとは違っていた。
その場が一瞬静まり返る。
だがやはり船長が、その静寂を破る様に何時もの軽い調子で聞き返した。
「ん?何だ、ゾロ」
ゾロは、そんな船長の目を真っ直ぐに見据えて言った。
「あいつ……ハーデスを、船に……サニー号に乗せてやってくれねえか?」
「ん、仲間にすんのか?」
「ああ……あいつは、おれの『知り合い』なんだ。迷惑は掛けねえ……おれが面倒を見る」