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魔王之死刀

第2章 ・血脈


「……おれの先祖は悪魔を呼び出して交わった……って、お前さっき言ってたよな……その相手って……」
 
 嫌な予感が彼の頭の中を過る。
 ゾロの言葉に少年は頷き、こう言った。

「そう……その相手こそ、魔王だったのさ。『我が血を受け継ぐ子孫を残せ』と言う条件……所謂『契約』を、願いを叶える為に彼女に結ばせた。そして彼女は魔王と交わり、めでたく子が生まれ……長い時を経て君が誕生した……と言う訳さ」

「……なっ……」

 ゾロは絶句した。
 予想していた事とは言え、何とも悍ましい話である。
 人間には強い面も弱い面もある事を、彼は重々知っている。
 怒りや恨みの念を抱かない人間等、いない事も。
 しかし、強い恨みを抱き、願いを叶える為に魔王と交わり、結果、悪魔の力を受け継いだロロノア・ゾロが誕生したのである。
 人外の者と交わる事も、その血を受け継ぐ事も、普通であれば非現実的な話で到底信じられず、受け入れられない事であろう。
 下手をすれば、ある者は精神崩壊、またある者は、悪魔の力を受け継ぐ事によって、その力を乱用する様になるかも知れないのだ。

(……生まれて来たのがおれだったから良かった様なものの、これが他の誰かだったら……)

 ゾロの頭の中を、最悪の結末が過る。
 しかし同時に、彼自身も目的の為に手段を選ばず、悪魔の力を手に入れたのである。
 自分の中に眠っている悪魔の力を得る事を彼は自ら選び、人間である事を捨てたのだ。
 血の為せる業なのであろう。
 彼は自分自身も含め、物事に囚われた者の恐ろしさと愚かさを、またしても目の当たりにしたのだ。
 自身が選んだ道と血のルーツに、彼は自嘲する他なかった。
 
(結局は、同じ穴の狢……か……)

 彼が自虐的な笑みを浮かべつつ、少年に視線を向けたその時。
 姿を消したデカラビアが青い光を放ちつつ、少年の前に姿を現したのだ。
 戻って来た星型の魔神の右横に、小瓶が一つ浮いている。
 その魔神は、主に対して体を軽く丸めお辞儀をした。

「閣下、ご指示通りソーマを持って参りました」

「ああ、手間を取らせたね。デカラビア、ありがとう」

「これは、閣下……勿体ないお言葉、痛み入ります。それから、様子を見て参りましたが……」
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