第2章 ・血脈
少年にそう言われたゾロは、その事実を認めるしかなかった。
同時に、他力本願を嫌うゾロは、先祖を嫌悪した。
彼の先祖は悪魔召喚儀式を本当に行い、悪魔に願いを叶えて貰った結果、彼自身が生まれたのである。
己の欲望の為、願いを叶える為に、人間は見る事の出来ない神にも悪魔にも、縋る生き物なのだ。
己の願いを叶えたいが為、助けを得たいが為に、軽率に神仏に祈る行為を、彼は昔から愚行と考えていた。
それが先祖であれば尚更。
理由は何であれ、彼は先祖の行動を、愚かだと思うしかなかった。
ゾロは、少年に訊ねる。
「……で、その願いって、一体何だったんだよ……」
「仲魔を呼び出した君の先祖は、女性でね。なかなか子が出来ずに姑から虐めを受けていたんだ。耐えかねたその女性は意を決して『悪魔召喚儀式』を行ったんだよ。そして契約を結び……めでたく子が出来た、という訳さ」
「……そんな事で……ガキ産めねえとダメとか……女はガキ産む道具じゃねえだろうが……本当、今も昔もおかしな事を言う奴が多過ぎるぜ……」
ゾロは呆れて、続けて言葉を吐き捨てる。
「全く……くだらねえ事を……」
彼は、世間の古い常識やしきたりを嫌う所があった。
眉間に皺を寄せ、荒い口調で言葉を吐き出して行く。
「……で、下っ端の奴じゃその願いは叶えられねえから、魔王が出て来たって訳か……?大層な話だな……」
少年はゾロの少し捻くれた様な言い草に苦笑しつつ、それでも丁寧に受け答えをする。
「……そのニンゲンには、もう一つ願いがあってね……それは、自分を虐げた姑を亡き者にする、と言う願いだったのさ。姑に虐げられていた彼女は、日頃から深い恨みを抱えていたのでね」
「ああ……復讐って奴か……」
ゾロは、先程の少年との会話を思い出す。
負の念は負の念を呼び、復讐は復讐を呼ぶ。
彼は元々、復讐や仇討ち等も、余り好ましく思わない男である。
人間が持つ一面を、彼はまた少し垣間見た気がした。
少年は、淡々と話を続ける。
「一度の召喚で二つの願いは、原則受け入れられないのでね……姑を消し、子を産める様にすると言う二つの願いを叶える代わりに、魔王はある条件を提案したんだ」
「……ま、まさか……」
ゾロは、戦闘前に少年が語った話を思い出す。