第17章 …不惜身命
ハーデスは、思わず息を飲んだ。
「まず……船に乗るなら、お前が第一に護るのは、このおれじゃなく、船長である『ルフィ』だ。その次はクルー……仲間達だ。おれに助けは要らねえ。それから、おれの指示より船長である『ルフィの命令が最優先』だ。これは『絶対』だ……この二つが守れるんなら、船に乗せてやる。どうだ……守れるか?」
「……あっ、は、はい。ゾロ様の命令であれば……」
彼女の相変わらずの堅苦しさに、ゾロは右手で頭を搔きつつ言葉を吐き出した。
「だからよ……『様』とか要らねえって……ゾロでいい、呼び捨てでいいつってんだろ」
「……あ、は、はい……申し訳ありません……で、では……ぞ、ゾロのご命令であれば、そのお約束……必ず、お守り致します」
ぎこちなくそう答えたハーデスの大きな瞳を、ゾロはじっと見詰めた。
彼女の強く純粋な決意が、闇に乗って彼に届く。
(死皇帝陛下のご命令……お約束は、必ずお守り致します)
王の側近として、厳しい英才教育を受けた彼女が恋い焦がれる、死皇帝からの『命令』。
それは、何よりも大切で重いもの。
心は闇に包まれたままだが、しかしその瞳には光が宿っていた。
彼女の返答に嘘偽りはない。
ゾロは彼女の美しい大きな瞳を見詰めつつ、口端を上げた。
「よし……じゃあ、決まりだな。今からお前はおれの側近……だが、同じ船に乗る仲間……『仲魔』だ。これからは、そんな堅っ苦しい言葉なんて使うんじゃねえぞ」
「あ……は、はい……」
「それから、もう一つ……お前はおれの知り合いって事にしておく。おれがまだルフィと合う前に、お前と会ってる事にしておくから……何か聞かれたら適当に話合わせとけ、いいな」
「わ、判りました……」
「……色々話して疲れたろ。宴が始まる迄、大人しく寝とけ……船長に話を付けて来る」
ゾロがそう言って立ち上がろうとした時。
少女のか細い声が、ゾロを止めた。
「あっ……あの……」
「あ?なんだ?」
「もう一つ、お伝えしなければならない事が……」
ハーデスは畏れながらも、しっかりとした声色でそう伝えた。
魔王は彼女の目を見詰めながら、静かに答える。
「言ってみろ」