第17章 …不惜身命
ゾロはそう続けるつもりだった。
しかし、その言葉の意図はハーデスには正しく伝わらず、その瞳から光が失われて行った。
「……判りました。ではこのまま真魔界に戻り、閣下にご報告を……」
彼女の心が更に強い闇に覆われる瞬間を、ゾロはひしひしと感じ取った。
恋焦がれる彼からの拒絶は、彼女に取って絶望へと突き落とされる事を意味する。
だが……魔王は深い溜息を一つ吐き、呆れた様に言った。
「お前なあ……話はまだ終わってねえんだ。最後迄、きちんと聞きやがれ」
「え……? あ、は、はい……」
「……確かにおれは魔神族に加わった身だが、表向きは人間……大剣豪を目指してる『麦わらの一味』……海賊の戦闘員だ。側近なんて必要ねえ……と思ったんだがよ。お前、潜入部隊員だろ? 少人数でマリージョアに行ったのか? 他の奴等はどうした」
「あっ、はい……私を入れて三名で潜入しました。他の者は、それぞれの配置に戻りました。」
「そうか……奴等に見つかったって聞いたが、良く無事で戻って来たな」
ゾロは不安そうな少女の顔を見下ろしつつ、ニヤリと笑って言葉を続ける。
「この機密文書も、おれに届ける為に命懸けで護り抜いたんだろ。おれも経験したから判るが、このワノ国へ潜入するには、巨大な滝を登らなきゃならねえ。激流と渦潮に飲まれれば船は沈み、死体となって浜に打ち上げられるか、生きて辿り着くか……どちらか一つの『裏ルート』だ。お前は単独であの荒波を潜り抜けて、この文書を必死で護り抜いたんだ……このおれに届ける為にな。その気概に免じて……おれの側近にしてやる」
「え……?」
「おれからルフィに頼んでおくから、お前も一緒に船に乗れ……その代わり、このおれの側近だ。かなりハードな務めになるかも知れねえぜ……? 覚悟はしとけよ」
「え……え、えええっ!?」
魔王……二代目死皇帝からの突然の召し抱えの命に、彼女は我が耳を疑い、そして驚愕した。
(わ、わ、私が……私がゾロ様の側近に……お、お傍に居られる……ど、ど、どうしよう……!!!)
絶望から歓喜へ……驚きと嬉しさが、その胸の内で爆発する。
その混乱を鎮める様に、ゾロの低い声が静かに彼女の耳に届いた。
「但し……条件がある」
「じ、条件……」
死皇帝ゾロの右目が、一瞬鋭くなる。
