第17章 …不惜身命
彼女のペールパープル色の瞳に、精悍な男の顔が映り込む。
二年間、手配書でしか見られなかった、憧れの剣豪。
(……え、え……嘘……ロ、ロロノア・ゾロ……様……? 魔王……死皇帝……陛下!? ほ、ほ、本物!!!?)
ハーデスの頭が真っ白になった。
恋い慕う魔王にして死皇帝が、自分のすぐ目の前にいる。
顔から火が出る程嬉しくもあり、死ぬ程恥ずかしい。
心臓が死ぬ程早く、鼓動する。
「あ、あの、私……そ、その……あのっ……」
口から出るのは意味のない言葉ばかり。
しかし彼女の心の中は、止めどない想いで溢れ返っていた。
(ど、ど、どっ、どうしよう……!!! 本当に、本当に会えちゃった……!!! 会えて嬉しい、もう死んでもいい……いや魂が消えないと死ねないけど……好きです、大好きです……ゾロ様っ……!!!)
体温と心臓の鼓動が急上昇する。
そんな彼女に、ゾロは思わず溜息を吐く。
「……心ん中で叫ぶな。うるせえ」
「……えっ?」
不意に、低く響く声が耳に届いた。
驚いて見上げると、ゾロは呆れて片手で額を押さえている。
「……お前の考えてる事は、全部こっちに伝わってんだよ……」
その言葉を聞いたハーデスは、数秒遅れて事態を理解した。
自分の盛大な心の叫びが、憧れの魔王に筒抜けだったのだ。
「あ、あわわわ……!!!」
恥ずかしさが限界突破する。
ハーデスは、バサッ、と毛布を頭迄被り、布団の中で丸まってしまった。
そんな彼女に、三刀流の魔王はもう一度深い溜息を吐く。
「……全く……お前、本当に潜入部隊員なのか……?」
ゾロの呆れた呟きに、ハーデスは毛布から恐る恐る顔を出した。
ゾロは、そんな彼女の目をしっかりと見詰め、告げた。
「手紙は読んだ。お前がおれに勝手に命懸けてんのは、判った……」
その言葉に、彼女は目を丸くしながら何度も何度も瞬きを繰り返す。
『手紙は読んだ』
途端、ハーデスの頬は熟した林檎の様に真っ赤になり、更に熱を帯びて行った。
しかし三刀流の魔王は、顔色一つ変えずに言葉を続ける。
「……お前、ルシファーの命でここに来たんだろ」
「え?あ……は、はいっ……」
急な任務の話に、ハーデスは慌てて身を起こそうとしたので、ゾロは静かにそれを制した。