第17章 …不惜身命
『拝啓 死皇帝ロロノア・ゾロ陛下
ご無礼を承知で、こうして陛下にお手紙を差し上げる無作法、この様な想いをお伝えする不敬をどうかお許し下さい……。
この気持ちをどうしても貴方にお伝えしておきたくて、ペンを取りました。
私は幼い頃、生まれては行けない存在として、ずっと暗い場所で息を潜めていました。
二年前、この世界に来た夜に、貴方の手配書を拾いました。
手配書の貴方の目を見た時、私は心惹かれました。
凶悪な海賊狩り、野獣、魔獣……この世界の人々は貴方をそう呼びますが、私には判りました。
その瞳の奥にある信念……折れない強さを。
そして貴方は『闇』を知っている方。
そして、その闇を切り裂いて進む事が出来る方。
その貴方が、死皇帝となられた事を知りました。
その強さ故に、何時か危険に晒された時……もし私が傍に居られたなら。
私の命に代えても、貴方をお護りしたい……いいえ、お護り致します。
私の勝手な願いをお伝えした事を、どうかお許し下さい。
手配書の貴方が、私に希望をくれました。
ありがとう、死皇帝ロロノア・ゾロ陛下。
……この想いが何時か、貴方に届きます様に。 ハーデス』
手紙を読み終えたゾロは、深い溜息を一つ吐いた。
「……全く、会った事もねえ男に命懸けやがって……」
呆れた様に独り言を呟きつつ、手紙を丁寧に折り畳み、レザージャケットの裏ポケットに仕舞い込んだ。
それは、この男が生まれて初めて受け取った恋文だった。
想いが強過ぎる余り、迷いに迷って書いた手紙。
それを思い切って、この男に渡そうと思ったのだろう。
ここ迄強い想いをぶつけられては、もう他人事として突き放す事は出来ない。
ゾロは少女の寝顔に目を遣ると、また一つ、溜息を吐いた。
……それから数分後、ハーデスがその瞼をゆっくりと開けた。
(こ、ここは……私は、一体……)
見慣れない天井をぼんやりと見つめていたが、視線を動かした途端……鍛え上げられた逞しい胸板と、そこに刻まれた生々しい刀傷、そして綺麗に六つに割れた腹筋が、視界に飛び込んで来た。
(えっ……? す、凄い筋肉……刀傷? ま、まさか……)
視線をゆっくりと上に辿ると、鋭い眼光を放つ右目が、静かに自分を見下ろしている。