第16章 …異変
「この本……何だか高価そうな本ね……何かの辞典みたいだけど」
ロビンの声に反応する様に、ゾロがゆっくりと目を開ける。
その時、封筒を手にしたナミが素っ頓狂な声を上げた。
「ええっ!?ちょっと、何よこれ!!」
その声に、ゾロが思わず声を荒げた。
「ナミ、うるせえぞ……!あいつが寝てんだ、もうちょっと静かにしやがれ……!!」
「……もう、大声出るわよ!この手紙の宛名、誰だと思ってんの!あんたよ、あんた!!『ロロノア・ゾロ様』って書いてあるのよ!!」
その場にいたロビン、ブルック、サンジは驚きの余り、その場に固まった。
それもその筈である。
嘗てゾロはイーストブルーで『野獣』『魔獣』と恐れられ、現在は三億二千万ベリーの懸賞金が掛けられている、麦わらの一味の大幹部……剣豪なのだ。
世間が震え上がる程恐れられている男へ、可憐な少女からの手紙である。
その場にいた一同は、驚愕する他なかった。
「あ、あ、あんな可憐なレディーがこんなクソマリモに手紙ぃ!?ぜーったい何かの間違いだ!!おれでさえ、貰った事ないのにいーっ!!!」
サンジは金色の髪を振り乱しながら、縁側で一人騒いでいる。
ゾロは眉間に皺を寄せ、サンジを一喝した。
「おい、クソコック……!うるせえって言ってんだよ……!!静かにしやがれ……!!!」
静寂を切り裂く、低く、冷たく殺気立った声色。
一瞬、その場にいた仲間達の血の気が引いた。
しかし、ブルックだけは、その瞳の奥に宿る人間離れした『闇』を、見逃さなかった。
「そ、そんな怖い顔して怒らなくても……」
その時、苦笑するナミの声を遮る様に、ロビンが声を上げた。
「何……この本……全然開かないわ」
「えっ?ロビン、冗談はよしてよ。本が開かない訳ないじゃない」
「本当よ……全く開かないの。変ね……」
「……本なんだろ?開かねえならそのままにしときゃいいだろ。それより、そっちのデカい封筒には何が入ってるんだ?」
「あっ……そ、そうね。ええと、こっちは……え、えええっ!?」
「だからうるせえってんだよ……!静かにしろ、静かに……!!」
「……ちょっと……あの子、本当にあんたのファンかもよ……」
封筒から取り出されたのは、ゾロの指名手配書だった。