第2章 ・血脈
「どう言う思いを抱いて生きるか、か……全ては自由……そう言やあ、うちの船長……ルフィの奴も、何時も言ってるぜ……『おれ達は自由だ』ってな。そう言やあ、あいつ……どうなったかな……」
ゾロは、独り言の様にそう呟いた。
四皇カイドウと戦っているであろう、船長ルフィの戦況を気に掛ける。
その直後、彼は急に気が抜けた様に、大きな欠伸を一つした。
覇気と同時に、今迄使った事のない魔力を使った為であろう。
酷い睡魔に襲われたのだ。
その様子を見た少年は、奥に控えている四名に目配せをする。
するとデカラビアが、即座に青白い幾何学模様を床に描き、その場から、ふっ、と姿を消した。
少年はそれを確認してから、眠い目を擦るゾロに視線を移す。
「……ゾロ、流石に疲れた様だね。しかし、君もまた僕と同じ魔王族に位置する者。君も立派な魔王の血を引いているんだから、その強烈な睡魔も簡単に克服して貰わないとね」
「ああ……まあ、そうだな……って……おい!!ちょ、ちょ、ちょっと待て!!」
聞いたゾロは、驚いて顔を上げ視線を少年に向けると、思わず素っ頓狂な声を上げた。
「お前、魔王族とか魔王の血とかって……どう言う事だよ、おい!!おれは、普通の悪魔とか下っ端とか、そう言うのじゃねえのかよ!!!」
「ああ、そうか……悪魔の血を引いている、と言っただけだったか。そう、君は、僕と同じ魔神の上級種族……魔王族の一員なんだよ。君は、魔王の血を引いているんだ」
何食わぬ顔をして答える少年を、ゾロは鳩が鉄砲豆を食らった様な顔をして見ている。
自分が魔王の血を引いている等と、一体誰が考えるであろうか。
そんな事を考えるのは、ファンタジーが好き過ぎて、剣や魔法に心底憧れを抱いている人間だけであろう。
先程まで耐えられなかった眠気が、一気に何処かに吹き飛んで行く。
「じ、じゃあ……おれの先祖は、願いを叶える為に、魔王を呼び出したのか……」
「本来は違う仲魔が呼ばれたそうなんだけど……願いが願いだっただけに、代わりに魔王が出たんだよ」
「ま……マジで言ってんのかよ……そんな事、あり得ねえだろ……」
「申し訳ないが、全て本当の話だよ。僕は事実しか話さない。君はさっきの戦いで魔法を使った事を、もう忘れたのかい?」