第16章 …異変
「ん……?ありゃあ、ヤマトじゃねえか?」
逸早く気付いたゾロが、眉間に皺を寄せる。
(……只事じゃねえ……まさか……)
その予感は的中した。
カイドウの息子……いや、正確には娘であり、光月おでんに憧れ父親に歯向かい、ワノ国に加勢した人物。
そのヤマトが息を切らせて駆け寄り、やっとの思いで声を上げる。
「るっ、ルフィ……きっと、君達の仲間だと思うんだ……海外の人が、砂浜に漂着してて……」
瞬間、ヤマトの思念が闇に乗り、漂着した者の朧げな姿がゾロの脳裏に流れ込んだ。
生きているのか死んでいるのか分からない、一刻を争う状態。
ゾロの直感が訴える。
(……ルシファーの、マリージョア潜入部隊……!)
ゾロは前に進み出て、ヤマトに言った。
「ヤマト、案内しろ。命に関わるかも知れねえんだろ?」
「えっ……あ、う、うん、そうなんだ!意識がなくて……僕に付いて来て!!」
一味はヤマトの後を追って、砂浜を一直線に走った。
時計の針は午前十時を回っている。
現場には、既に十数人の村人達が集まっていた。
急いで駆け寄ると、クリーム色の大きなボストンバッグを強く抱きしめた少女が、砂浜に打ち上げられていた。
明らかにワノ国の者ではない。
黒いクロップドキャミソールにホットパンツ。
そして……その髪色。
魔界の紫色の空を淡くした様な……人間離れした美しい色をしていた。
明るい日の光に照らされたその白い肌は、ゾロの目には、明らかに『生身の人間』のものとは違って見えていた。
「れ、レディーじゃねえか!」
サンジが驚き声を上げる。
「気は失ってるけど、息はしてる……生きてる、大丈夫だ!」
駆け寄ったチョッパーが少女の息を確かめ、彼女が抱えるバッグに手を伸ばしたその時。
ゾロが、船医の小さな腕を掴んだ。
「待て、チョッパー」
低く、重々しい声だった。
耳にした事のない異様な声色に、仲間達が一斉にゾロを見る。
彼は倒れている少女を見下ろし、バッグを抱えるその両腕を注視していた。
意識は無い筈なのに、その指先はバッグを死守する様に力が込められている。
瞬間、ゾロの脳裏に見知らぬ光景が広がった。
……サニー号の甲板。
ペールパープルの髪が風を受け靡いている。
彼女は振り返り、笑って彼の名を呼んだ。
『……ゾロ……』