第16章 …異変
溜息混じりに呟き、何気なく少し離れた巨大な岩へと視線を移したその時。
大岩に寄り掛かる様に座る人影が、彼女の目に飛び込んだ。
辺りはまだ薄暗いが、それが誰なのかはすぐに判った。
「え、も、もしかして……あれって……」
「おーっ!!!ゾロじゃねえかー!!!やっぱ、帰って来たーっ!!!」
彼女の呟きに真っ先に反応したのは、麦わらの一味の船長……ルフィだった。
その声に、仲間達が一斉に振り向く。
暗闇に紛れているが、そこに居るのは確かにゾロだった。
彼は、歓喜の声を上げる仲間達にゆっくりと視線を移す。
左耳に付けている三連の金のピアスが、キラリと高い音を奏でた。
「……よう、お前等……大分待たしちまったみたいだな……」
低い声が、静かに辺りに響く。
その静寂を破る様に、仲間達は歓声を上げ彼に駆け寄って行った。
「てめえ、このマリモ野郎っ!!!一体何処行ってやがったんだよ!!!みんなを心配させやがって!!!」
皆より一足先に駆け寄ったサンジが、怒りに任せてゾロの胸座を掴んだ。
「あーあ……また始まっちまった……ったく、無事帰って来たってのによお」
サンジの後を追って来たウソップが、そう言って苦笑する。
しかし当のゾロの反応は、今迄と違っていた。
胸座を掴まれ怒鳴られれば彼もサンジに怒鳴り返し、胸座を掴み返すのだ。
……今迄の、彼であれば。
「……ああ、そりゃ、悪かった……みんな元気そうで、何よりだ」
ゾロは呟く様にそう言い、ニヤリと笑った。
殺意こそないが、感情の読めない言葉と冷たい光を放つ瞳に、サンジの背筋が一瞬凍り付く。
ゾロの胸座から、咄嗟にその手を離した。
その時サンジの後ろから、戻って来た仲間の名を呼ぶ男の明るい声が飛んで来た。
「おおーい!!!ゾローっ!!!」
その声が誰の声か、ゾロはすぐに判った。
その顔が心持ち和らぐ。
「おう、ルフィ……今戻った」
ゾロがそう言った瞬間、ルフィはサンジを突き飛ばして、剣豪の逞しい体に思いっ切り飛び付いた。
「ゾローっ!!!心配したんだぞ、お前っ!!!一体何処行ってたんだ!!!遅かったじゃねーか!!!」
「……心配掛けちまった、悪かったな」
「全くー、お前、また道に迷ってたんだろ。すぐ迷子になるからなあ、お前は」