第16章 …異変
深く頭を垂れる死神から、途方もない永い時間と揺るぎない忠誠心が伝わって来る。
ゾロは深く息を吐き、静かに口を開いた。
「……死神、良く判った。伝言、確かに受け取ったぜ」
一歩踏み出し、ボロボロの黒マントに包まれた骨ばった肩に己の右の掌を置く。
「先代に代わって礼を言う……本当に長い間、良くここを護ってくれたな。今後も他の仲魔達と共に、この場所を頼む」
微かに震えた死神が、顔を上げて再び深く一礼した。
そしてまた頭を上げると、光のない髑髏の眼窩が、新しき主をしっかりと見詰めた。
「……身に余る光栄。この幽界にて何か事があれば、何時でも私めをお呼び下さい。必ずや、貴方様の力となりましょう」
「ああ、頼むぜ。コンゴトモ、ヨロシク……な」
「……ははっ。私は魔人・死神。貴方様が治める世界の一つ『幽界』を守護する者……コンゴトモ、ヨロシク……お願い申し上げます」
死神はそう言うと、今度は小声で呪文を唱えた。
足元に青白い魔法陣が現れ広がって行く。
これから起こる戦いにゾロは胸を躍らせつつ、その姿は死神と共に、灰色の世界から一瞬にして消えて行った。
……丁度その頃。
ワノ国・鬼ヶ島跡の片隅に、ゾロを待つ麦わらの一味の姿があった。
皆、ワノ国の服装である着物に身を包んでいる。
ゾロが戻ると言う約束の時間である午前二時から、ずっとここで待ち続けているのだ。
「……おいおい、もう少しで夜が明けるぞ。ゾロの奴、本当に戻って来んのかよ?」
ウソップが心配そうな顔をして、サンジに訊いた。
彼は可憐な少女……『ルイ・サイファー』の美しい姿を思い浮かべつつ、煙草の煙をゆっくりと吐いてから言い切った。
「……間違いない。あのレディーがそう言っていたんだ。おれは、レディーの言葉を信じる」
「でも、もし……その女の子が嘘を言っていたら……」
ロビンの問いに、サンジは静かに答える。
「女の嘘は許す……それが男さ……ロビンちゅあん……」
「うおおおおーっ!!サンジっ、カッコいいーっ!!!」
チョッパーが大きな瞳をキラキラさせ、羨望の眼差しを向ける。
ナミは頬杖を突きつつ、そんな二人に冷たい視線を送っていた。
「何言ってんのよ……全く、こんな時に……」